購入者の声
のっぽ「それのさ、買った人の声の欄でオイラ気になった所があるんだけど」
HERO「あ、俺も。俺はこれが気になった」
のっぽ「『モテモテでラブレター殺到』…
どう気になったの?」
HERO「『僕は、恥ずかしい話しですが
今まで女の子と付き合った事がありませんでした。
それどころか、学校では
ネクラな性格のせいで気持ち悪がられていました。』」
のっぽ「うん」
HERO「『でも、そんな僕をハンターG2が救ってくれました。』」
のっぽ「ハンターG2っていうと…これか」
HERO「そうそう。愛の放火魔」
のっぽ「ナンパ運のやつ、か」
HERO「『ハンターを購入してからというもの、とにかくモテまくり!
すでにラブレターは40通を越えています。
こんなにモテて自分でも信じられない心境です。
今では、可愛い彼女もできて充実した毎日です。
男友達はうらやましがっていますが、
ハンターは僕だけの宝として秘密にしておきます。』」
のっぽ「はい」
HERO「まずこの男の年齢を見てみましょう」
のっぽ「22歳」
HERO「大学四年生です」
のっぽ「うん」
HERO「大学四年生で、ラブレター」
のっぽ「なるほど。あはは。古風だねぇ」
HERO「ひと昔前の高校とかだったらまだわかる。許せる。
靴箱に入れたりとかね」
のっぽ「定番だね」
HERO「今だったらラブレターよりメールとかにしませんか。普通は」
のっぽ「そだね」
HERO「ましてや大学生なら
『合コンで好きなタイプの女の子と知り合えました』
とかの方が自然でしょ」
のっぽ「ああー」
HERO「どう考えても嘘っぽいじゃん。
いまどきハートマークのシールで封した白い封筒を持って
『これ読んでください!お願いします!』
みたいな感じで来るかなぁ?」
のっぽ「古風だなぁ。ナンパとかそういうのとは程遠いな」
HERO「あーでもこれ『恋文殺到』っていう効果もあるんだよな」
のっぽ「単にラブレターだけ来てたりして」
HERO「もしくはこいつの脳内の話とか」
のっぽ「あーありうるなぁ」
HERO「ときメモの話してるのかもよ」
のっぽ「伝説の樹の下で、みたいな」
HERO「そうそう。相手の名前は藤崎詩織」
のっぽ「ありがちだなぁ」
HERO「そりゃ殺到ですよ。モテモテですよ」
のっぽ「モテモテ。きゃあ恥ずかしい言葉」
HERO「モテモテー」
のっぽ「そっかー。ちょっとヤバイとこ逝っちゃった人だったのね」
HERO「まぁこんなもん買う段階でじゅうぶんヤバイわけだが」
のっぽ「おっしゃるとおり」
HERO「で、お前が気になったのって?」
のっぽ「これ。
『難関国立大学に見事合格!!』ってやつ」
HERO「ほう」
のっぽ「これさー、最後まで読んでものすごくツッコみたくなった」
HERO「『私は、4浪もしていた浪人生でしたが、
やっと希望の国立大学に合格する事ができました。』」
のっぽ「希望の大学に合格。ここチェックな。」
HERO「『実は私が合格した大学は、最近まで偏差値が20も足らなかったんです。
でも、ラスプーチンの妖石を買って
自分で試験に合格できるようにとお願いの儀式をしたところ、
急に偏差値がグングン伸びたんです。
しかも、試験問題は得意な問題ばっかり!!
結局、予定よりもずっと上のランクの大学に合格できました。』」
のっぽ「お前それ希望の大学じゃねぇよ!」
HERO「…なるほどな。あー騙されてた。これは気付かなかったわ」
のっぽ「おかしいじゃん、こいつ。お前の希望の大学はどれやねんと」
HERO「最初に『希望以上の大学』とでも書いとけばよかったのになぁ」
のっぽ「ランクずっと上行っちゃったよ」
HERO「なるほど。これは論理的に確かにおかしいな」
のっぽ「でしょ?」
HERO「んー…
あ、ベヘモト様と本当に交流した人がいるらしいぞ」
のっぽ「えっ」
HERO「『幽霊屋敷が平和になった!!』」
のっぽ「ほう」
HERO「『私の家は先祖代々、悪霊に呪われた家系で、
家には悪魔が住み憑いていました。』」
のっぽ「いきなり飛ばしてるなぁ」
HERO「『そのせいで奇怪で不幸な事ばかり起こり、
何度も悪霊を追い払おうとしましたが無駄でした。
しかし、獣神の涙を買ってからは、』」
のっぽ「えーと獣神の涙っていうとこれだな。一番高いやつ」
HERO「『ベヘモト様と交流出来るようになり、
霊視によって悪霊の巣を発見したのです。』」
のっぽ「…巣があるんだ」
HERO「…あるんだ」
のっぽ「またゴキブリ扱いか」
HERO「『そしてベヘモト様から授かった秘法を実践したところ、
悪霊を退治できました。』」
のっぽ「ほー」
HERO「ベヘモト様すごいんだなぁ」
のっぽ「整理番号2番のベヘモト様ー」
HERO「秘法ってやっぱりコンバットか」
のっぽ「そうそう。
ベヘモト様、『ちょっと行って来ますー』ってコンバット置いてくるの」
HERO「あははは」
のっぽ「『明日の朝になったらいっぱい取れてると思いますから』」
HERO「ゴキブリホイホイかよ」
のっぽ「悪霊ホイホイ」
HERO「悪霊がベターッてくっついてるのか。嫌だなぁ」
のっぽ「『ほらほら取れてる取れてる』
『見せんでいい見せんでいい!』」
HERO「悪霊をおびき寄せるエサは何だろう」
のっぽ「んー。やっぱ人の悪い心とか?」
HERO「恨みとか。怨念とか」
のっぽ「そうそう。そういうのだよきっと。
それをこうギューッて丸めて」
HERO「ホウ酸とか混ぜて」
のっぽ「間違って子供が食べてしまって」
HERO「病院!病院!」
のっぽ「親戚の子供がそうなったことあった」
HERO「俺も危なかったことあるぞ」
のっぽ「ほう」
HERO「小学校三年か四年の時だったと思うけど、親がホウ酸団子作ってたの」
のっぽ「うん」
HERO「ボウルの中でホウ酸団子の素が生クリームみたいになっててさ。
親がその状態でどっか行ってたんだ」
のっぽ「あー」
HERO「そこに俺が帰ってきたのな。
で、あ、うまそーと思ってつまみ食いしようかと思ったけど
思いとどまったんだ」
のっぽ「ああ」
HERO「思いとどまって良かった!」
のっぽ「…ホウ酸団子って普通乳幼児が誤って口にして事故になるんだから、
小学生にもなって食って病院運ばれてたらかっこ悪いぞー。
まぁ作りかけで放置する親も親だけど」
HERO「いや、本当に見た目が生クリームみたいだったんだってば」
のっぽ「あー」
HERO「あれは怖かった。ぞっとした」
のっぽ「あ、そういえばオイラも昔ホウ酸食ったことあるかも知れない」
HERO「え、なんで」
のっぽ「あのさ、小学校の理科の実験でさ」
HERO「うん」
のっぽ「白い粉をいくつか用意してそれぞれの性質を調べる
っていう実験やってたのな」
HERO「あーなるほど」
のっぽ「ホウ酸と食塩と砂糖とあともう1種類くらいあったかな」
HERO「うん」
のっぽ「で、オイラ当時、塩好きだったの」
HERO「ぶっ」
のっぽ「先生とか周りの目を盗んでこぼれた塩とか食べてたんだわ」
HERO「……」
のっぽ「で、食べてたらなんか塩の味がしない…」
HERO「やばいやばい」
のっぽ「砂糖の味でもなかった」
HERO「やばいぞー」
のっぽ「ちょっとやばかった」
HERO「まぁ数粒口にしただけなんだから大丈夫だろうけど」
のっぽ「うん。こうして生きてるし」
HERO「俺も呪いかけられたけど生きてるし」
のっぽ「生きてるし」
HERO「大丈夫。僕らは生きてます」
のっぽ「生きてるって素晴らしい」
HERO「本当だね」
のっぽ「生きてるだけで丸もうけ」
HERO「お前好きだな、その言葉」
のっぽ「うん。座右の銘だ」
まとめ ◎僕らはみんな生きている |
のっぽ | それでもやっぱりベヘモト様万歳 | |
HERO | 一度ベヘモト様と交信してみたい |
他留意点
HERO「まだいろいろツッコミどころはいっぱいあるんだけどなぁ」
のっぽ「やろうと思えばね」
HERO「ていうか、ここ電話してみたい。
『ご質問はお電話で』って書いてあるし」
のっぽ「ご質問ある?」
HERO「ギーガギス壱号っているんですか」
のっぽ「あはは」
HERO「ベヘモト様ってどんな形で交流出来るんですか」
のっぽ「んー」
HERO「ていうかどんな神様なんですか」
のっぽ「象だよ。象。ぱおーんだよ。」
HERO「ぱおーんなのか」
のっぽ「ぱおーん」
HERO「テレカ持ってたかな。あるある。よし、これ使おう。」
のっぽ「マジか」
HERO「えー かけてみたいじゃんー」
のっぽ「そういえばさ、ちょっと気になったとこあるんだけど」
HERO「ん、どれ?」
のっぽ「ここの、『合計3万円以上ご購入の場合』のとこなんだけど」
のっぽ「『ブードゥー教の聖水』
『ウンモ星人の聖水』
ってあるじゃん。」
HERO「うん」
のっぽ「聖水と聞いて何を思う」
HERO「…………ぶっ!
えっ、そっちの意味?」
のっぽ「そっちの意味。
実際、オウムでも似たようなことやってたし」
HERO「え、じゃこれ、宇宙人の…小便?」
のっぽ「飲尿療法みたいなもん?」
HERO「嫌だなぁ、それ」
のっぽ「あとさ、最後まで読んでもわからなかったことがあるんだけど」
HERO「どれ?」
のっぽ「時々出てくる『ART』って、これ何?
どこにも説明がないんだけど」
HERO「『フェティッシュ』っていうのは説明あるね」
のっぽ「『フェティッシュとは、石製品のARTの事です。』
じゃあそのARTって何なんだ」
HERO「んーなんだろ」
のっぽ「書いてないでしょ」
HERO「あーほら、当たり前の事っていちいち説明しないじゃん」
のっぽ「うん」
HERO「だから、当たり前の言葉なんじゃない?
この手の業界では」
のっぽ「電話して聞くならその辺からじゃないかな」
HERO「あ、そうだな。よし、電話で訊くリスト作るか」
のっぽ「あはは」
HERO「えーと、まずARTってなんですか」
のっぽ「そもそもどう読めばいいんだ。アートでいいのかな」
HERO「弐号がいるなら壱号もいるんですか」
のっぽ「んー」
HERO「あとは…この『アストラル』ってどういう意味?」
のっぽ「あ、アストラルっていうのはね、
アニメとかでは『精神体』の意味で使われるんだけど」
HERO「ふーん」
のっぽ「ただ、辞書で引いてみたら…
あ、調べました!」
HERO「お、『調べました』復活ですか」
のっぽ「言うの忘れてた。
えとね、辞書によりますと」
as・tral ━━ a. 星の(多い); 星形の; 星からの. |
HERO「へぇー」
のっぽ「なんですて」
まとめ ◎もうちょっとやそっとの変な文では驚きません |
のっぽ | そもそもこれ書いた人の精神状態を知りたい | |
HERO | この文章に慣れてしまった自分がイヤだな |
比較
HERO「はぁー… しかしこれ一人では絶対ツッコみきれないな。
二人がかりでも無理っぽい」
のっぽ「ここまで来ると、途中でツッコむのが嫌になってくるもんな」
HERO「さっき紀伊国屋で比較用に買ってきたパチンコの本にも
開運グッズの広告があるけどさ」
のっぽ「うん」
HERO「こっちはまだ意味わかるんだよね」
のっぽ「例えば」
HERO「よくあるじゃん。
『昔から何のとりえもなく平凡な人生でした』…云々」
のっぽ「云々て」
HERO「『この商品を買ったら女にモテモテ、車も買った』」
のっぽ「あー。ややこしい理屈付けがないのね」
HERO「そうそう。まぁ中には笑えるのもあったけど」
のっぽ「ほう」
HERO「『彼女いない歴24年アニメオタクの俺に
ワン○ースのナミそっくりの彼女が出来た』」
のっぽ「ナミて。それは嬉しいのか」
HERO「これも脳内彼女かなぁ。アニヲタだし」
のっぽ「でもさ、男のアニヲタでワンピース好きって少なくないか」
HERO「じゃ女?」
のっぽ「あとは子供」
HERO「まぁでもこの広告がアレと決定的に違うのは、わかりやすさだよね」
のっぽ「あー」
HERO「小難しい説明がないよね。
これ買ったらどうなる、とかその程度じゃん」
のっぽ「言い方を変えれば底が浅いってとこかな」
HERO「だねぇ。あの広告はいちいちうんざりするほど長いから」
のっぽ「あれ書いた人さ、こんな仕事してないで
小説かなんか書いた方がいいんじゃない?」
HERO「本当だな。売れそうだぞ」
のっぽ「富士見ファンタジア文庫あたりに持っていって」
HERO「あははは」
まとめ ◎その辺の広告が普通に見えてくる |
のっぽ | アニメのファン層を掴んでいないおじさんが書いたと予想 | |
HERO | 彼女ではなく妹が12人できるなら私は買います |
実際に電話かけてみた
のっぽ「で、どうだった?」
HERO「うーん」
のっぽ「とりあえず最初から行こう。
まず電話かけました」
HERO「2コール目で女の人が出てきました」
のっぽ「ふむ。で、HEROがとりあえず用件を言いました」
HERO「少々お待ち下さいって言われて保留音」
のっぽ「うん」
HERO「で、また同じ人が出てきて
商品案内担当か開発担当かなんかそういうのに代わるって言われました」
のっぽ「うん」
HERO「で、また保留。その後今度は男の人が出てきました」
のっぽ「はいはい」
HERO「で、まずARTって何かの略称なんですかって聞いたら、
商品名ですと応えられた」
のっぽ「そこに意味は?」
HERO「特にないって。会社で名付けてるだけだって。
詳しくは教えてくれなかった」
のっぽ「そうか」
HERO「で、会話がまともそうなんでアホらしくなってそこでやめた」
のっぽ「…で、ありがとうございましたって言って切っちゃったのね」
HERO「はい」
まとめ ◎結局何もわかりませんでした |
のっぽ | 最初の意気込みの割りにさっさと引き下がるHERO | |
HERO | だって応対がすごくまともだったんだもん |