第ニ章 ぶらり鳥羽の旅
12月31日午後1時。
電車は鳥羽駅へ到着。
最初の目的地に向けて10分ほど歩きました。
鳥羽の街。
オイラにとっては懐かしい思い入れのある街なのです。
―そう、あれはまだオイラが初々しい小学六年生の頃でした。
修学旅行で伊勢・鳥羽を訪れたオイラは、ミキモト真珠島と鳥羽水族館を訪れました。
ミキモト真珠島で買ったお土産のアコヤ貝。
それは、開けると中に真珠が入っているというなんともメルヘンチックな逸品でした。
大好きなばーちゃんへのお土産。
ばーちゃんに早く渡したくてうずうずしていたお土産。それがハズレだとも知らずに。
……そうそう。
あの後電話で問い合わせて、取り替えてもらったんだっけ…メルヘン台無し。
とりあえず、今回は真珠島はパス。時間も無いし。
今回の目的はただひとつ。
鳥羽水族館。否!「超水族館鳥羽」です。なんだその大層な名前は。
―鳥羽水族館。
オイラが修学旅行で行ったときにはラッコで持ちきりでした。
鳥羽水族館の顔でした。
鳥羽水族館といえばラッコでした。
…その名残は今でも鳥羽の街に色濃く残っているようで、鳥羽水族館へ向かう途中にもラッコをモチーフにしたものがたくさんありました。
また鳥羽水族館とミキモト真珠島は場所的に近いため、必然的にラッコと真珠の組み合わせをモニュメントにしたものが多いようです。
これは水飲み場です。
ごらんの通り、真珠を抱えたラッコのモニュメントを真中に据えており、非常に愛くるしいことになっています。
でもこのままだと、この後ラッコさんが真珠をかち割ってしまうような気がするんですけど。
さぁ、そしていよいよ到着です、鳥羽水族館!
妙に人が居ないのが気になりますが、まぁこんなもんなんでしょう。
大晦日に水族館に来ようなどという酔狂な人間は少ないのかもしれません。
ここでも例の「伊勢初詣切符」が再び役に立ちました。
これを見せることで、入場料を割引してくれるのです。
いやはや、やはり持つべきものは鉄道マニアの友達ですね。
中に入ると意外に酔狂な人間は多かった模様で、そこそこの賑わいを見せていました。
色とりどりな魚たちの泳ぎを流し見しながら、ブースを回ります。
昔は「うわぁすっごいなぁ。おさかなさんいっぱいだなぁ。旨そう」とピュアなことを考えておったものです。
しかし今見ると資料展示室なんてなんだか文化祭のように見えてしまい、なんだか安っぽく感じてしまいました。
まぁその安っぽさが良いんですけどね。
年は取りたくないものです。あ、イワナだ、旨そう。 ←進歩なし
さてここで問題です。
これはなんでしょう。
↓↓↓答え↓↓↓
A) ゴマフアザラシ(正面図。しかも上下ひっくり返って泳いでいました)
アザラシと言えば最近では多摩川のタマちゃんが有名ですが、オイラ世代ではやはりゴマちゃんでしょう。
ゴマフアザラシのゴマちゃん。アザラシはゴマフアザラシですよやっぱり。
さて、オイラが鳥羽水族館に来たのには当然目的があります。
それがこれ。
ニャーと鳴くカエル。
せっかくの機会です。
噂のカエルをしっかり見てきましょう!
森の水辺の動物を集めたブースなんですが、ちゃっかりカエルをシンボルイメージに据えています。
扉をくぐると、早速ありました!
水槽があり、その中に問題のカエルがいるようです。
そしてその横にはテレビモニター。
エンドレスでニャーと鳴く瞬間を放映しつづけていました。
水槽をよく見ると、こんなシールが。
「10匹いますので木の下や石の間を探してください。」
おお。10匹もいるのですか。どれどれ…
………
…………
……………
見つからねぇよ!!
判りません。一体どこにいると。
貴様ら隠れすぎ。擬態とかしすぎ。
しかしそばにいたカップルのにーちゃんはなぜか簡単にポイポイ見つけていきます。
にーちゃん 「あ、そこ。…とここにもいる。あ、そこにも。あとここと…うーんだめだ、五匹までしか見つからない」
いやいや。そんだけ判れば十分ですって。
そのにーちゃんが見付けたらしき個所をオイラも一生懸命見たのですが、結局二匹しか見つかりませんでした。
見えます?
しかし、カエルを見付けようと必死に20分くらい粘っていると、いろんな人がそこを通りすぎていきます。
その人たちの十人十色な反応は聞いていて実に面白いものでした。
・おばちゃんの団体の会話
おばちゃんA「うーん、見つからないわねぇ」
おばちゃんB「そうね、こんなに小さいもんね」
大きさの問題じゃないと思います。
・お母さんの爆弾発言
お母さん「何これ。ジュゴンの方がまだ面白いわ」
貴方は笑いを求めてここへ来たのですか。確かにジュゴン面白い顔してるけど。
・ほんわか親子の会話
父親「ほーら、このテレビ見ててみ?鳴くときプーッて膨らむから」
見るとこ違うから!鳴き声が問題だから!
子供「わ、ほんとだー!ネコの形してるね」
してませんから!ネコなのは鳴き声ですから!
さて、カエル探しを諦めて移動しますと、「タッチングプール」というのがありました。
水槽が用意してあり、中には魚やホヤ、ウナギなどが放たれています。
それらをお客に直に触って楽しんでもらおうというブースらしいです。
しかし、相手は動物。しかも触るのは子供。
タッチングプールなど、この二大「何をしでかすかわからん生物」の恐怖に関わるところ。
細心の注意を払っておかないと、どんな事故が起こるか判りません。
「にぎったり、こすったりすると彼らは肌あれをします。
ゆび1本でやさしくふれましょう。」
読み方によっては卑猥な響きすら感じてしまう説明書きも去るものですが、イラストがいい味出しています。
ETのように指先でコンタクトを取るタコさんが可愛い。
足が七本しかないことなど忘れてしまいそうです。
「おこらせると、かむものもいます。
生きものだから、仕方ありませんね。」
「かむよ」という直球勝負な見出しは良いと思います。インパクトでかいです。
が、「生きものだから仕方ありませんね」というところに逃げを感じるのはオイラだけですか。
そして視線を下にずらすとそこでは一人の女の子が…
うなぎ握ってるー!
女の子「お母さーん、なんかぐったりしてるー」
お前が握っとるからやー!
鳥羽水族館、シメはお土産物屋さんです。
そう…ここがオイラの第二の目的地。
ここには淡くてほろ苦い思い出があるのです。
そう。あれは、恋、だったのかも知れません…
―オイラが件の修学旅行で鳥羽水族館に行った時、お土産屋さんにも寄りました。
そこで、運命の出会いを果たしたのです。
ひと目惚れでした。
愛らしい顔立ち。
気品溢れるその姿。
オイラは、夢中になりました。
ラッコ型の製氷皿に。
ほしい!これは欲しい!
当時のオイラは心底そう思いました。
しかし。ああ、しかし。
世の中とはなんと無情なのでしょう。
そんなオイラの小さな恋路を邪魔するものが、ラッコ製氷皿の前に置かれていたのです。
\900 |
大金です。小学生には。
なんということでしょう。オイラの恋は、お金に、お金ごときに引き裂かれてしまったのです。
―そして今。
社会人になって900円など屁でもなくなったオイラは、あの頃のほろ苦い傷を癒すべく、リベンジに燃えているのでした。(ラッコ型製氷皿に)
いざ、お土産物屋さんロックオン!入店!
さぁ、探せ!探しに探せ!
ラッコ製氷皿!製氷皿!製氷皿ぁー!!
オイラ「すみません。ちょっと探しているのですが」
店員「はい?なんでしょう」
オイラ「10年ほど前にここにあったラッコ型製氷皿ってありませんか?」
店員「じ、10年前ですか!?」
そらびっくりするわな。
しかし、残念ながらもうそんな商品は置かれていないとのこと。
オイラの十年越しの恋は、悲恋に終わってしまったのでした…。
ていうか、ぶっちゃけもうラッコって流行ってないわけで。
哀しみの帰路。
三重県警マスコットのミーポくんに見送られながら、オイラは鳥羽を後にしたのでした…
ミーポくん。かわいい。