ショートコント:勇者vs魔王
(2005/5/10作)


勇者「ついにここまで来たぞ。魔王、覚悟しろ!」
魔王「え、誰?」
勇者「俺こそが都からお前を倒しにやってきた勇者だ!」
魔王「うっわ。自分で自分のこと勇者だって」
勇者「えっ」
魔王「お前、ナルシストもいいとこな」
勇者「え、いやいや、だってみんな俺のこと勇者って呼ぶし」
魔王「お前なー、辞書で勇者って引いてみろって」

  ゆうしゃ 【勇者】
  いさましい人。勇気のある人。勇士。
         (大辞林 第二版より)

魔王「わかる? 勇者っつのは職業でもなんでもないの」
勇者「うっ」
魔王「他の人が勇気あるねーえらいねーって意味で使う言葉なの」
勇者「ううっ」
魔王「つまりお前は自分で自分のことを勇気ある人なんだぜーって言ってたのな」
勇者「ぐはっ、なんて傲慢なやつだ俺!」
魔王「理解した?」
勇者「うん。俺、言葉の使い方間違ってた」
魔王「ドンマイ。失敗は誰にでもあるよ」
勇者「ありがとう。でもさ」
魔王「うん?」
勇者「俺、職業としての勇者じゃないなら何なんだろう」
魔王「あー」
勇者「無職ってこと?」
魔王「そうだな。プーだ」
勇者「えっ、プー!?」
魔王「プー」
勇者「うっそぉ」
魔王「プゥー」
勇者「お前ムカつく」
魔王「ごめん」
勇者「でも困ったな。俺まさか無職だとは思わなかった」
魔王「プーは世間体悪いもんね」
勇者「そのプーっていうのやめて」
魔王「どう言えばいい?」
勇者「ノービスとか」
魔王「ROを元ネタにする段階でちょっとダメな人だと思うよ」
勇者「あーあ。勇者なんかにならなきゃよかった」
魔王「転職すれば?」
勇者「いや、前に転職の神殿に行って転職したいって言ってみたことあるんだよ」
魔王「うん」
勇者「そしたらさ、勇者を辞めようだなんて愚か者め!って怒られた」
魔王「ああー。その人も勇者を職業だと思ってるのか」
勇者「そうそう。ったく、あの頑固じじいったら」
魔王「あ、そういえば」
勇者「ん?」
魔王「いや、聞いた話だと、魔王を倒しちゃえば転職できるらしいよ」
勇者「えっ、マジすか」
魔王「うんマジマジ」
勇者「おー、じゃそれ試してみよう」
魔王「うん、がんばー」
勇者「というわけで死ね魔王!」
魔王「ちょこざいな、返り討ちにしてくれるわ勇者め!」