ショートコント:七夕
(2005/7/7作)


「ごっめーん、待った?」
「いや、それほどでもないよ」
「ごめんねー。なんかお仕事のほうが揉めちゃって」
「なんかあったの?」
「うん、紡績工場の拡充をね、考えてるんだけど」
「へー」
「予算との折り合いがなかなか厳しくてねー」
「大変だなぁ」
「そっちはお仕事の方どう?」
「ああ、うん、やっぱ狂牛病関係で厳しくてさ」
「あー。お互い大変ね」
「そうだな。まぁがんばろう」
「うん」
「さて、どこ行こうか」
「まぁ毎年お決まりのコースで」
「おっけー。じゃあとりあえずは短冊ウォッチング?」
「うん。楽しみー」
「しかしなんで下界の人間は俺らのデートにかこつけて願い事とかすんのかな」
「こっちにはそんな義理ないのにねー。あ、見て、またあるわよあの短冊」

○ 世界人類が平和でありますように

「定番ねー」
「俺らにどうしろって言うんだろ」
「あたしたちにできることって言ったら…」
「とりあえず牛肉の出荷?」
「ヒンズー教徒から猛反発食らうわよ」
「あ、そうか。やっべー」
「あっちの笹のは子供が飾ったのね。願い事も可愛いわ」

○ PSPが買ってもらえますように

「微妙に文法がおかしいのもご愛嬌ね」
「NintendoDSよりPSPの方が人気あるって噂、本当なんだなぁ」
「あれだけ不具合やら設計不良やらでガーガー言われてたのにね」
「あ、出たよウケ狙い」

○ 世界制服

「あいたたたたた」
「痛いなぁー」
「痛いわねー」
「ネタとしての斬新さもないし」
「"征服"の字を間違えているところがまた痛々しさを助長してる」
「世界中の制服がほしいって意味なんだろうか」
「変態ね」
「変態だな」
「次行きましょうか」
「うん」

○ 相川さんと恋人になれますように 佐々木

「うっわぁ。よくこんなとこに実名あげる気になるな」
「あっ、ちょっと待って、こっちにその相川さんの短冊がある」
「お、どれどれ」

○ 唐沢さんと付き合えますように 相川

「わっちゃー」
「佐々木さん、叶わぬ恋ね。可哀想に」
「あ! ちょ、こっちにその唐沢さんの短冊が」

○ 佐々木さんと恋人になりたい 唐沢

「うわ、これが三角関係ってやつか」
「へー、初めて見…ちょっと待って。違う。これ三角関係じゃない」
「え?」
「三角関係っていうのは、一人の人を二人が取り合う状態のことよ」
「あ、そうか。じゃあこういう関係ってなんて言うんだろ」
「…というか…この三人の中に絶対アブノーマルな人がいると思うんだけど…」
「…あ!」
「えーと…」
「み、見なかったことにしようか」
「そ、そうね。次行きましょ、次」

○ 愛に気づいてください

「ペニシリンの"ロマンス"ね」
「マサルさんだな」

○ 郵政民営化法案が参議院を通りますように

「首相きたー!」
「首相きたー!」

○ 願い事が思いつきません

「じゃあ書くなって」
「ある意味幸せな人なんじゃない?」

○ 世界中の人の願い事が叶いませんように

「ひどっ」
「最悪だ」

○ 思いがけずラッキーな出来事が転がり込みますように

「それは七夕じゃなくて棚ボタ」
「ナイスツッコミね」
「ありがとう」
「やっぱ毎年面白いわぁ」
「うん、面白いね…ってあれ?」
「どうしたの?」
「あの短冊…」

○ 今年も雨で例の二人が会えませんように デネブ

「…デネブって、私たちの家の間に川を作った神様よね…」
「あのおっさん、既に目的見失ってただの嫌がらせになってるんじゃないか?」
「僻んでるのよきっと」
「よし。あの隣に俺らの短冊吊るそうぜ」
「え」
「さらさらさら。これでどうだ」

○ 毎年7月7日は晴れますように アルタイル

「独身おやじの嫌がらせには負けないぜ」
「あたしならもっと裏をかくわ。さらさらさら」

○ 雨が降っても会えますように ヴェガ

「うーんなるほど」
「これで晴れても雨でも会えるわ」
「よし、じゃあ吊るそうか」
「うん。よいしょ」
「これでよし、と」
「じゃ、もう行きましょうか」
「そうだね」
「次どこへ行く?」
「こないだディープインパクトされた彗星見に行こうよ」
「わぁ、いいねー」
「決まりだな」
「行こう行こう」
「よし、行こー!」
「楽しみー」

「…そういえばさ」
「うん?」
「俺たちの願い事って、誰が叶えるんだろ」