ショートコント:サスペンス竹取物語
(2005/3/2作)


「かぐや姫さん」
「……!! どうしてここに刑事さんが…」
「やはりここにいらしたのですね」
「……」
「わかったんです、今回の事件の真相が…あなただったんですね」
「…なんのことでしょう」
「あなた…帝に求婚されたのはもっと前なんじゃないですか?」
「……!!」
「最初に求婚してきた5人よりも前に、あなたと帝は密かに通じ合っていた」
「そんなこと……」
「そんな時に5人の貴公子に求婚されてしまった。そこであなたは一計を案じた」
「……」
「5人にそれぞれ無理難題を出し、諦めてもらおうと思ったのです」
「……」
「ところが、燕の子安貝を取りに行った中納言石上麻呂足がそのせいで怪我をした」
「……」
「屋根から落ちて下半身不随の重症です。あなたも責任を感じたんじゃないですか?」
「……それは…」
「しかしこのことをネタに大納言大伴御行があなたを脅迫してきた」
「…いいえ」
「そしてその時、勢い余って彼を殺してしまったんです」
「…いいえっ」
「それを、あたかも龍の首の玉を取りに行って死んだように見せかけた…」
「いいえ、違います! 会ってなんていません!」
「…これを見てください」
「……っ」
「これは彼が握り締めていた紙の切れ端です」
「…それが何か?」
「事件の翌日にあなたと会った時…あなたは暑いと言いながら扇子を使いませんでしたね」
「……」
「不思議に思ったので覚えています。あれは…使わなかったんじゃない。使えなかったんですね」
「……」
「あの扇子、一部が破れていたんじゃないですか? それを隠すため、あえて扇子を使わなかった」
「…違うわ…」
「なら見せていただけませんか? あの時の扇子を」
「……!!」
「…かぐや姫さん…」
「…仕方なかったのよ…」
「……」
「あの男は…私が帝様と通じ合っていることまで掴んでいた。そのことで強請ってきたの」
「え…!」
「私が原因であることが知れ渡れば、帝様にまで迷惑がかかってしまう」
「……」
「だから私は…この手であの男を……!」
「かぐや姫!」
「……! 帝様…」
「もういい。もういいんだ」
「帝様…」
「僕が悪かった。付き合いを隠していたのがここまで君を追いこんでいたなんて気付かなかったんだ」
「ごめんなさい…私…私……っ!」
「かぐや姫…結婚しよう」
「えっ…」
「君が罪を償ったら…その時式を挙げよう」
「帝様…!」
「かぐや姫……!」
「……」
「……」
「…ではかぐや姫さん。ご同行願えますか」
「はい」
「待っているよ。かぐや姫」
「ええ。帝様…行って来ます」


〜かぐや姫を乗せたパトカーが去る絵をバックにエンドロール〜





 ちなみにかぐや姫を連行した主人公の刑事の名前は月野 迎(つきの むかえ)