ショートコント:能力名ネーミングセンス 〜召喚編〜
(2022/11/14作)


 ビカーッ!! シュー…

* 「な、なんだここは!?」「どうなってんの!?」「さっきまで学校にいたのに!!」
王様「おお! よくぞ来てくれた異界の勇者たちよ!」
* 「異界!?」「まさか私たち異世界に来ちゃったの!?」
王様「うむ。ここはヨクアール王国。君たちはこの世界を救う勇者として召喚されたのだ」
* 「そ、そんな!」「なんで…!」
王様「今この世界は、復活した魔王の勢力によって滅ぼされつつある。それを君たちに阻止してもらいたい!」
* 「魔王だって!?」「そんなの、俺たちにできるわけないよ!」
王様「案ずるな! この世界の人間はみな一人に一つずつ「能力(スキル)」を持っている」
* 「スキル…?」
王様「うむ。そして異界からの来た者は、特に強力な能力(スキル)を授かることが多いのだ」
司祭「わたくしが皆様の能力(スキル)を<鑑定>いたしましょう」
王様「その力をもって、どうかこの世界を救ってくれ!」

* 「「「ざわざわざわ…」」」

司祭「むむ! そこの君!」
A 「は、はい!」
司祭「素晴らしい! 君の能力は<剣聖>じゃ!」
A<剣聖>「剣聖?」
王様「うむ! <剣聖>は、剣を扱うととてつもない力を発揮する能力(スキル)! 頼りにしておるぞ!」
A<剣聖>「は、はいっ!」
司祭「むむ! そこの君も素晴らしいぞ!」
B 「お、俺かよ!?」
司祭「君の能力(スキル)は<怪力>! 文字通り、とんでもない力を出せる能力じゃ!」
B<怪力>「まじかよ!?」
司祭「さらにそこのお嬢さん!」
C 「ひっ!?」
司祭「君は<超回復>! 全ての傷を癒し、死者すら蘇らせることができようぞ!」
C<超回復>「ええええっ!!??」
王様「なんということだ! さすがは異界の勇者たち!!」
司祭「そしてそこの君は!!」
Z 「あ、はい」

司祭「……<鑑定(悪)>…?」

Z<鑑定(悪)>「……(悪)……?」
王様「…………?」
司祭「…………?」
* 「…………?」

王様「…<鑑定>は司祭と同じように能力(スキル)を見ることのできる力だが…」
司祭「はい、しかし(悪)とはなんでしょう?」
A<剣聖>「よくわからないけど、<鑑定>の一種なら僕たちの能力(スキル)が見えるってことですよね?」
B<怪力>「だな。試してみれば分かるんじゃねぇの」
C<超回復>「そうね。Zくん、既に能力の分かっている私たちを<鑑定>してみて」
Z<鑑定(悪)>「う、うん。わかった。えっと、じゃあまずAくんは…」
A<剣聖>「おう」
Z<鑑定(悪)>「<刃物依存症>
A<剣聖>「えっ」
Z<鑑定(悪)>「<刃物依存症>。……って文字が見えた」
A<剣聖>「刃物依存症……」
Z<鑑定(悪)>「えっと…じゃあ次にBくんだけど…」
B<怪力>「おう」
Z<鑑定(悪)>「<脳筋>
B<怪力>「えっ」
Z<鑑定(悪)>「<脳筋>」
B<怪力>「脳筋……」
Z<鑑定(悪)>「それでCさんが…」
C<超回復>「ちょっと待って、なんか嫌な予感がするからちょっと待」
Z<鑑定(悪)>「<貴様には死すら生ぬるい>
C<超回復>「もはや文章」

王様「ふむぅ…これは…」
司祭「<剣聖>が<刃物依存症>…、<怪力>が<脳筋>…」
王様「表現はアレだが、確かに能力(スキル)の内容は間違ってはいない気がするな…」
司祭「そうですね。おそらく<鑑定(悪)>は、鑑定はするけど全て悪口で表現される能力なのでしょう」
王様「何それちょっと面白い」
司祭「面白がらないでください」
Z<鑑定(悪)>「ちなみに司祭さんは<個人情報抜き取り>です」
司祭「えっ…」
王様「あぁー。<鑑定>はそうなるんだ。まぁ確かに言われてみればそうだな」
司祭「えぇー…酷い言われよう」
王様「おい、そこの兵士。お前の能力(スキル)は何だ?」
兵士「はっ。私は<肉体強化>です! この力で多くの魔物を蹴散らしてきました!」
Z<鑑定(悪)>「<ドーピング>って出てますね」
兵士<肉体強化>「えぇー…間違ってはいないけど、なんかイメージ悪いなぁ……」
王様「そこの魔術師。お前の能力(スキル)は」
魔術師「私ですか。私の能力は<炎>。炎を扱う魔術を得意としております」
Z<鑑定(悪)>「<放火魔>ですね」
魔術師<炎>「」
王様「ウケる」
司祭「火の玉ストレートで草。炎だけに」

Z<鑑定(悪)>「ちなみに王様の能力が<誘拐>なんですけどこれは一体」
王様<召喚>「……」