ショートコント:能力名ネーミングセンス 〜決戦編〜
(2022/11/15作)


ドクドーク「キヒヒヒヒ。よく来たな勇者ども」
A<剣聖>「出たな! お前が魔王軍四天王の一人、ドクドークか!」
ドクドーク「いかにも。私の能力(スキル)、<猛毒>に侵されて苦しみながら死ぬがよい!」
C<超回復>「Zくん、あいつの能力名は何?」
ドクドーク「あ? 今私が言ったばかりだろう。私の能力(スキル)は<猛毒>…」
Z<鑑定(悪)>「<汚物>だって」
ドクドーク「えっ」
Z<鑑定(悪)>「<汚物>」
ドクドーク「ふ、ふざけるな! 私の能力(スキル)は<猛毒>だ!」
Z<鑑定(悪)>「いやそう言われても、<汚物>って書いてあるんだもん」
ドクドーク「<汚物>…」
Z<鑑定(悪)>「うん、<汚物>」
ドクドーク「<汚物>…………」
C<超回復>「今よ、<刃物依存症>!」
A<剣聖>「その名前で呼ばないで……っ!!」ブシャー
ドクドーク「ぎゃああああ」
A<剣聖>「ふう。ようやく四天王の一人を倒せたぞ」

ガチガーチ「ガッハッハ。よく来たな勇者ども」
A<剣聖>「お前が魔王軍四天王の二人目、ガチガーチだな!」
ガチガーチ「その通り。オラの能力(スキル)は<絶対防御>。これを見ろ!」
C<超回復>「ああっ。ガチガーチの周りに薄ぼんやりした壁が現れたわ!」
B<怪力>「くっ、この薄ぼんやりした壁、俺の力でもビクともしないぜ!」
ガチガーチ「無駄だ無駄だ。オラの薄ぼんやりした壁は誰にも壊せやしない!」
C<超回復>「Zくん、あいつの能力を鑑定よ!」
Z<鑑定(悪)>「<引きこもり>
ガチガーチ「えっ」
Z<鑑定(悪)>「<引きこもり>」
ガチガーチ「いや、そういうつもりじゃないんだけど…」
Z<鑑定(悪)>「<引きこもり>」
ガチガーチ「違う! オラは引きこもりじゃねぇ!」バリーン
C<超回復>「ヤツが薄ぼんやりした壁を解除した! チャンスよ<脳筋>!」
B<怪力>「脳筋って呼ぶなぁぁぁぁっ!」ボカッ
ガチガーチ「ぐふっ」
B<怪力>「よし、これで二人目も攻略だ!」

トキメーキ「うふふふふ。よく来たわね勇者ども」
A<剣聖>「くっ。お前が三人目の四天王、トキメーキだったのか!」
トキメーキ「大正解。あたしの能力(スキル)、<魅了>であたしの虜になりなさい」
A<剣聖>「みんな、あいつの目を見ちゃだめだ!」
B<怪力>[魅了]「ほえほえー。うわぁ美人さんだぁ」
A<剣聖>「ああっ、ダメだ<脳筋>!」
B<怪力>「脳筋って呼ぶな! はっ、危なかったぜ」
A<剣聖>「正気に戻ったか<脳筋>」
B<怪力>「だから脳筋って呼ぶな!」
C<超回復>「危険な相手だわ。Zくん、能力を鑑定してちょうだい!」
Z<鑑定(悪)>「<ビッチ>
トキメーキ「えっ」
Z<鑑定(悪)>「<ビッチ>」
A<剣聖>「……あー…」
B<怪力>「そっか…そうだよな……」
トキメーキ「えっ。ちょ。なんでいきなりあたしに興味なくしてんの!?」
C<超回復>「よし、これで<魅了>は無効化したわ!」
D<ドM>[魅了]「それでも好きだぁぁぁ!!」
C<超回復>「無効化できていない人も中にはいるけど」
A<剣聖>「てやあああああ!」ザシュッ
トキメーキ「きゃあああああ!」
C<超回復>「これで三人目ね!」
Z<鑑定(悪)>「あの魅了、同性と処女厨には効かないんだ…」

フムフーム「くっくっく。他の四天王を全て倒したようじゃな」
A<剣聖>「そうだ! お前で最後だ、四天王フムフーム。覚悟しろ!」
フムフーム「さえずるな勇者ども。<鑑定(悪)>、その力はワシには効かぬ」
Z<鑑定(悪)>「なんだって!」
C<超回復>「ハッタリよ! Zくん、鑑定しちゃいなさい!」
Z<鑑定(悪)>「……! なに!?」
C<超回復>「ど、どうしたの!?」
Z<鑑定(悪)>「……<無能>
C<超回復>「えっ」
Z<鑑定(悪)>「<無能>って出てる」
A<剣聖>「無能?」
B<怪力>「どういうことだよ!?」
C<超回復>「まさか…能力がないってこと!?」
フムフーム「概ね正解と言ったところかのう」
C<超回復>「なんですって?」
フムフーム「ワシの能力(スキル)は<冷静>。多少落ち着く程度の能力じゃ」
B<怪力>「なんだそれ!?」
フムフーム「効果の程がほとんど分からん。なら無能と言っても確かに間違いはないのう」
C<超回復>「なんてこと! すごく冷静だわ!」
A<剣聖>「そうか。<鑑定(悪)>は自分の能力(スキル)に自信のある奴ほどダメージが大きい」
B<怪力>「つまり元々大した能力じゃないやつには通じにくいってことか!」
Z<鑑定(悪)>「そんな弱点があったなんて…」
フムフーム「くっくっく。さぁどうする勇者たち!」
C<超回復>「大した能力じゃないなら、普通に倒しちゃえばいいんじゃない?」
B<怪力>「それもそうだな。えい」ガツン
フムフーム「きゅう」
A<剣聖>「よし、これで四天王は全員倒したぞ!」

魔王「ついにここまで来たか、異界の勇者たちよ」
A<剣聖>「後はお前を倒すだけだ! 覚悟しろ魔王!」
魔王「元気が良いな。だが吾輩の能力(スキル)を知っても、粋がっていられるかな?」
B<怪力>「なんだと!?」
魔王「吾輩の能力(スキル)は<不死身>だ」
C<超回復>「なんですって…!!」
魔王<不死身>「お前たちがどうあがこうと、吾輩が死ぬことは絶対にない」
A<剣聖>「そ、そんな……」
B<怪力>「どうしようもないじゃないか……」
C<超回復>「ま、まだよ。こっちには<鑑定(悪)>がいるんだから!」
A<剣聖>「そうだった!」
B<怪力>「おいZ、あいつを鑑定してくれ!」
Z<鑑定(悪)>「わかった! えっと……えっ?」
C<超回復>「どうしたの!?」
Z<鑑定(悪)>「<死ねない>……」
B<怪力>「はぁ!? それが能力名だってのか!?」
C<超回復>「そのまんまじゃない!」
A<剣聖>「なんてこった、これじゃあ…」
魔王<不死身>「はーっはっはっ。死ねない、その通りだ、それがどうしたのかね!?」
A<剣聖>「やっぱり効いていない!」
B<怪力>「なんてこった! もうおしまいだ!」
C<超回復>「そんな…そんなことって…!」
Z<鑑定(悪)>「ちょっと待って。まだ続きがあるんだけど」
* 「「「えっ」」」

Z<鑑定(悪)>「
 <死ねない。どうあがいても死ねない。
  世界が滅び、自分一人になっても死ねない。
  愛した人、愛すべき子供、大好きな家族、
  すべてが逝くのをいつも見送る立場となる。
  体がずたずたに切り裂かれても死ねない。
  痛いのに死ねない。
  毒に侵されて苦しんでも死ねない。
  苦しいことがあって死にたくても、
  その選択肢を持つことを許されない。
  現世から逃げることを許されない。
  発狂し自我が保てなくなったとしても
  死ぬことを許されない。
  死ねない。それは世界で最も残酷な拷問>」

Z<鑑定(悪)>「以上です」
魔王<不死身>「…………」ズーン
A<剣聖>「…うわぁ、魔王が露骨に凹んでる」
B<怪力>「…いや、うん。まぁ、なぁ……」
C<超回復>「どうすんのよこれ…」
D<ドM>「辛いことを楽しめばいいんだよ」
A<剣聖>「お前引っ込んでろ。というかお前いつの間にか出てきたけどなんなんだよ」