ショートコント:心霊写真
(2008/08/14作)
司会「さぁ始まりました、心霊特集『オバケの泉』。
私、司会の憑依帰依子(ひょうい・きえこ)です。よろしくお願いします」
(※拍手)
司会「そして解説はいつものとおり、織賀無道(おが・むどう)さんです」
織賀「どうも、よろしくお願いします」
司会「それでは早速一枚目のお写真に行ってみましょう。最初は東京都の匿名希望さんからの投稿です。
仲間内で行った旅先の旅館の部屋での記念写真だそうです。どうぞ!」
(※スクリーンに写真が映し出される)
(※客席からの悲鳴)
司会「こ、これは怖い…」
織賀「うーむ。なるほど、これは確かに心霊写真ですね」
司会「そうですね。机の下に恐ろしい形相の顔が…」
織賀「いえ、多分それは鞄の模様です」
司会「へっ?」
織賀「光の加減で顔に見えたんでしょう。霊はこっちです。棚の上」
司会「えっと…ゆるキャラで有名な兜を被った猫のぬいぐるみくらいしか見えませんが…」
織賀「それです。それが霊です」
司会「ええー」
織賀「恐らくこの辺りで非業の死を遂げた猫の怨霊でしょう。念が強いのか、はっきり写っています」
司会「そ、そうですね。まるで本物のぬいぐるみみたいに見えますね…」
織賀「ただ顔が怒っている感じではありませんので、恐らく害はないものと思われます」
司会「うん、まぁゆるキャラですしね。ではこれは除霊の必要なしと」
織賀「ええ。必要ないと思います」
司会「ありがとうございました。では次に参りましょう。次は鹿児島県の匿名希望さんから。
友達数名と、有名な心霊スポットになっている廃墟で撮った写真だそうです。どうぞ!」
(※スクリーンに写真が映し出される)
(※客席からの悲鳴)
織賀「むう…これは悪い霊ですね…」
司会「やはりそうですか。確かにこの壁に浮き上がった人の顔は恐ろしい形相をしていますもんね」
織賀「はい? ああ、それはただの壁の染みでしょ」
司会「えっ?」
織賀「霊はこっちです。天井の方」
司会「ええと…天井が朽ち落ちて空が見えていますね。でも特に何も見えませんが…」
織賀「えっ、いるじゃないですか、空の真ん中に」
司会「え? …え、あの、これは月ですよね?」
織賀「いえ、霊です」
司会「ええー! これが霊なんですか」
織賀「正確には魂ですね。霊魂の発した光がこうして写真に写っているのです」
司会「人魂!? このどう見ても満月っぽいの、人魂なんですか?」
織賀「そうです」
司会「ええー」
織賀「しかもよく見てください。この人魂には顔が浮かび上がっている…!」
司会「いや、クレーターの模様でしょ。ウサギが餅ついてる感じの」
織賀「いえ、人の顔です。ここが目、鼻、口。ね」
司会「まぁ…そう言われるとそう見えなくもないですが」
織賀「これはこの廃墟で亡くなった自殺者の霊ですね。訪れる人に深い恨みを抱いている」
司会「それは不味いですね」
織賀「ええ。お払いしておきましょう。観自在菩薩行深般若波羅蜜多…」
司会「…どう見てもお月様だと思うんだけどなぁ…」
織賀「恰っ! …これでもう大丈夫です」
司会「ありがとうございました。それでは次のお写真に行きましょう。
秋田県の匿名希望さんからの投稿。深夜のサービスエリアで撮った写真だそうです。どうぞ!」
(※スクリーンに写真が映し出される)
(※客席からの悲鳴)
司会「こここ、これは怖い! 血まみれの生首がボンネットの上に…!」
織賀「いえ、それは霊じゃないです」
司会「…なんとなく予想はしていましたが、やっぱりそうなんですか」
織賀「はい。霊的なものは感じませんので」
司会「じゃ、これは一体…」
織賀「さぁ?」
司会「さぁ、って」
織賀「僕はその場にいたわけじゃないですからね。ただ少なくとも霊ではないです」
司会「そうなんですか」
織賀「本物の生首なんじゃない?」
司会「そっちの方が怖いですよ!」
織賀「霊はこっちです」
司会「え、投稿者の横で一緒にピースしてる男の人ですか? 何かおかしなところあります?」
織賀「おかしなところって言うか、彼自体が霊?」
司会「ええー! 思いっきり被写体ぶってるじゃないですか!」
織賀「きっと目立ちたがり屋だったんでしょう」
司会「めちゃくちゃ迷惑だよ! 記念写真に普通に混ざろうとすんなよ!」
織賀「僕に言われても…」
司会「そりゃまぁそうですが…」
織賀「まぁとりあえず、彼は写りたかっただけだと思うので、特に害はないです」
司会「フィルム一枚ダメにされた時点で被害受けてるような気もしますけどね…」
織賀「そうとも言えますね」
司会「ありがとうございました。それでは本日最後のお写真に行ってみましょう。
埼玉県の匿名希望さんからの投稿。自宅前で撮影した写真だそうです。どうぞ!」
(※スクリーンに写真が映し出される)
司会「…うん……? これは…一見普通の写真に見えますが」
織賀「ええ。一見普通の写真ですね」
司会「ということは、やっぱり心霊写真なんですか」
織賀「ええ。これは心霊写真です」
司会「うーむ。どこに霊がいるんでしょう…あ、この隅に不自然に映っている謎の光でしょうか」
織賀「いえ」
司会「違うんですか。じゃあこの木のうろのところが顔っぽいとか…」
織賀「そうではないです」
司会「えー。じゃ一体どこに霊がいるんですか?」
織賀「この写真自体がこの世に存在しているはずのない物体です」
司会「えええー!?」