ショートコント:赤鼻のトナカイ
(2005/12/14作)
「あっ、ルドルフだ」
「ルドルフだ」
「赤っ鼻のルドルフだ」
「変なやつ。なんで鼻が赤いんだ」
「これがシャア専用ってやつですか?」
「やーいやーい」
「…はぁ。なんで僕は鼻が赤いんだろう。いつも皆に笑われる」
「ふぉっふぉっふぉっ。どうしたんだいルドルフ。落ち込んでいるようだが」
「あっ、サンタさん」
「元気を出しなさい。元気があれば何でも出来る。いちにぃさんだー。じゃよ」
「棒読みで言われても元気出ませんよ」
「何かあったのかね」
「はい…僕は見てのとおり鼻が赤いので、皆に笑われてしまうんです」
「ふむ、なるほど。じゃあマジックで塗り潰すか」
「いやいやいや。その力技はいくらなんでも」
「墨汁?」
「塗料の問題じゃない」
「ふむ。まぁ人には個性というものがあるからのう」
「トナカイですけどね。でもどうして僕の鼻は赤いんでしょう」
「霜焼けじゃね?」
「かなりの高確率で違うと思います」
「そういえば、こんな話を聞いたことがある」
「なんでしょう」
「わしのひいじいさんの孫から聞いた話じゃ」
「素直にお父さんと言いましょうね」
「さっきの表現だと、おじさんという線もあり得るじゃろ」
「あ、おじさんなんですか?」
「いや、父の話じゃ」
「素直にお父さんと言いましょうね」
「東北のある村に彦兵衛という若者がおった」
「まさかサンタさんの口から日本の昔話が語られようとは」
「その者は村の若い娘と結婚し、息子と娘を一人ずつ儲けた」
「はぁ」
「しかし息子には生まれつき肩にあざがあったのじゃ」
「なるほど」
「んで、なんだかんだあってその二人の子供は逮捕されましたとさ。めでたしめでたし」
「そこを端折るなよ! しかもなんで逮捕されてんの!」
「あざが蝶の形だったんじゃよ…」
「遠い昔を懐かしむような目で、ファミコンネタに持っていかないでください」
「で、なんの話じゃったかの」
「だから僕の赤い鼻の話ですよ。今の昔話にもなっていない昔話がどう関係するんですか」
「ん。関係ない。ただの雑談」
「あんたやりたい放題だな」
「実はな…お前はコピーロボットだったのじゃ!」
「ええっ」
「…という展開はどうじゃろう」
「知らないよ! 一瞬ドキッとした自分がバカみたいだよ!」
「じゃが真面目な話、ルドルフよ。お前の赤い鼻も意味があるんじゃよ」
「えっ」
「それは赤い鼻のお前にしか出来ないことなのじゃ」
「な、なんですかそれは。教えてください!」
「例えば、暗い夜道を走っていたとしよう」
「はい」
「その時お前のそのピカピカの赤い鼻が役に立つんじゃよ」
「そうだったのか…」
「夜道を照らし、私たちを安全に導いてくれる灯火となっているんじゃ」
「な、なんか自信が出てきました!」
「うむ。その赤い鼻、誇りに思いなさい」
「はい!」
「あっ、ルドルフだ」
「ルドルフだ」
「鼻がライト代わりのルドルフだ」
「変なやつ。なんで鼻が光るんだ」
「これが鼻からビームってやつですか」
「やーいやーい」
「…あの、サンタさん、前より変なヤツ扱いされてるんですけど」
「うん。そりゃそうだよね。鼻がライトて」