ショートコント:おままごと
(2012/5/29作)
「あら奥さん、こんにちは」
「まぁまぁ奥さん、こんにちは」
「こんにちは、シュンくん」
「こんにちは、アイちゃん」
「アイちゃん、シュンくん。
お母さんたちお話してるから一緒に遊んでらっしゃい」
「遠くに行っちゃダメよ」
「はーい」
「じゃ、おままごとしよー!」
「いいよー!」
「ふふふ、二人はいつも仲良しねぇ」
「ええ、本当に」
「シュンくんがお父さんで、わたしがお母さんね」
「わかったー」
「じゃあ始めましょう」
「ただいま」
「あなたおかえりなさーい。ご飯できてるわよ。はいどうぞ!」
「いただきます。もぐもぐ… うっ!」
「!?」
「!?」
「ううっ…お前、一体何を…っ」
「…ごめんなさい。こうするしか…なかったの…」
「ぐああ…ぐふっ」
「ごめんなさい…ごめんなさい…」
「はっ。俺は何を」
「目を覚ましたのねあなた」
「これは…このみなぎる力は…」
「そう。あなたはあのサイヤ人の血を引く伝説の戦士…
死の淵から蘇ればパワーアップするのよ!」
「そ、そうだったのか!」
「!?」
「!?」
「さぁ…戦いの続きを始めましょう」
「いいだろう! 勝負だ!」
「今度こそ私を楽しませて頂戴」
「ふふ…俺をパワーアップさせたこと、後悔させてやるぜ…!」
「できるものならね…!」
「上等だ…吠え面をかくがいい! 行くぞ!」
「「じゃーんけーん」」
「!?」
「!?」
「グー!」
「グーを切り裂くチョキ!」
「!?」
「!?」
「ま、負けたわ…!」
「やった…勝った! アイちゃんに勝ったぞ!!」
「さすがねシュンくん…まさか一度のパワーアップで
わたしに勝る力を手に入れるなんて…」
「アイちゃんの…おかげだよ…」
「シュンくん…」
「くっくっく、アイちゃんがやられたようだね」
「「マキちゃん…!!」」
「!?」
「!?」
「その子はあたしたち女子グループの中でも最弱…
喜ぶのはまだ早いよ!」
「なんだと…!」
「どうした? 怖気づいたかい? さぁ、かかってきな!」
「臨むところだ!」
「じゃーんk」
「指スマ2!!」
「!?」
「!?」
「…負けたわ…」
「!?」
「!?」
「くっ…あなたに負ける日が来るなんて…ね」
「もういい…もうこんな下らない争いはやめよう」
「何を言って…」
「争いは何も生み出さない。戦う必要なんてどこにも無いんだ」
「…奇麗事よ」
「奇麗事でもいいさ。君が生きていてくれるなら…」
「シュンくん…」
「マキちゃん…」
「この泥棒猫」
「!?」
「!?」
「アイちゃん…!」
「シュンくんはわたしの旦那様よ。あなたなんかに渡さない…!」
「落ち付いて」
「あなたなんか…あなたなんかいなくなってしまえば…!!」
「やめなさい、アイちゃん…いえ、あたしのクローン」
「!?」
「!?」
「えっ」
「あなたは気づいていなかったでしょうね。
あなたが作られた存在だということに…」
「そ、そんな…そんなことが…!」
「いえ、確かよ。あなたは私の細胞を基に作り上げられたクローン」
「そしてそれを作ったのが僕だ」
「シュンくん!?」
「!?」
「!?」
「そう、僕は科学者」
「あたしはその助手」
「そして君…アイちゃんは偽りの世界の中で育てられた実験生物だったのだ」
「そんな…嘘…!!」
「真実を知ってしまった以上、君には消えてもらわなければならない」
「…!!」
「残念だ。君との仮初の生活もなかなか楽しかったんだけどね?」
パァン…!
「!?」
「!?」
「……(ガクッ)」
「さようなら。アイちゃ…」
パァン…!
「!?」
「!?」
「な…ッ!」
「あなたもよ。シュンくん」
「な…なぜ…マキちゃ…」
「まだ解らない? あなたもクローンだったのよ」
「!?」
「!?」
「なん…だと…っ!!」
「あなたも本物の科学者から作られたクローン。そして私も…」
「…そう…だったのか…(ガクッ)」
「…さようなら。シュンくん…」
「……」
「博士。第23次回実験は終了しました。改修をお願いします」
「……」
「…博士? 応答を…博士? …まさか!」
――シェルターの扉を開けて表に出たマキ。彼女が見たものは、科学者たちの変わり果てた姿と戦火により終わろうとしている世界そのものだった――
Fin.
「!?」
「!?」
「おままごと楽しかったね、シュンくん」
「うん、楽しかったね、アイちゃん」
「また遊ぼうね。ちなみにあたしの名前はマキじゃないよ」
「そうなんだ。初めまして」
「初めまして」
「初めまして」
「!?」
「!?」