ショートコント:ねずみの嫁入り
(2005/09/07作)


「お父様」
「なんだい、ねず美」
「私もそろそろ結婚を考えるべき頃合だと思うの」
「な、何っ。お前、誰か良い人がいるのか」
「それが、特にいないのよねぇ」
「なんだ。びっくりさせるんじゃないよ。で、ねず美はどんな男がいいんだ」
「そうね、私は強い男が好みだわ」
「ふむ、強い男か。なら太陽はどうだ。いかにも強そうじゃないか」
「た、太陽!?」
「あ、しかし太陽は雲に隠されてしまうな。では雲の方が強いということか」
「く、雲ですか」
「待てよ。雲は風で吹き飛ばされてしまうぞ。つまり雲より風の方が強いということだ」
「今度は風…」
「しかし頑丈な壁はいくら風が吹いてもびくともしない」
「壁…」
「うん、壁の方が強いな。では婿候補は壁さんということに」
「あっ、あっ、待ってお父様。私たちネズミは壁を食い破るわよ」
「なんと! ネズミは壁より強いのか」
「ええ、ええ。そうですとも。だから一番強いのはねずみ…」
「しかしだ。そうなると我々の天敵ネコが最強ということになりはしまいか」
「えっ」
「つまりお前はネコのお嫁さんに…」
「殺られるじゃん」
「殺られるな」
「そ、そういえばネコは水を入れたペットボトルに弱いと聞いたことがありますが」
「あ、それガセビア。それを使うとうそつきになっちゃうから」
「そ、そうなの…」
「うーむ。私は恐ろしいネコの元に可愛い娘を送り出さねばならないのか…」
「(じょじょ冗談じゃない!) そ、そうだわ、いくらネコでも人間には敵わないわよ」
「おお、確かに」
「でしょ、お父様」
「ふむ。だがしかしそれなら、サイヤ人の方が強いぞ」
「は」
「サイヤ人は戦闘民族だからな」
「え。いや。あの」
「地球人最強でもクリリン止まりだ。ベジータや悟空とは格が違う」
「ヤムチャは論外なのね」
「待てよ。しかしいくら悟空でも作者の鳥山明には敵わんよな」
「えええー」
「む。とは言え鳥山明は集英社の編集部に敵わないか」
「ど、どうだろう…」
「今は集英社より講談社のほうが強い?」
「知らないわよそんなの」
「あーむしろ新刊の量とかから考えると小学館かな」
「適当な基準ね…はっ、そうだ。お父様!」
「ん? なんだ」
「小学館といえばドラえもん、そしてドラえもんが苦手なのはねずみよ!」
「おお! なるほど確かに!」
「でしょ! だからやっぱり私のお婿さんはねずみ…」
「しかしねずみは、ねずみ取りにやられるよな」
「ね、ねずみ取りぃ!?」
「つまりお前はねずみ取りのお嫁さんに…」
「殺られるじゃん」
「殺られるな」
「お父様」
「なんだい、ねず美」
「私をお嫁に出したくないんでしょ」
「うん」