ショートコント:未来から来た少女
(2010/2/21作)
♪ピンポーン
「はい」
「あ、どうもこんにちはー」
「…ええと、どちら様ですか?」
「えっとぉ、初めまして」
「はぁ」
「実は、私、未来から来たのです」
「はい?」
「みーらーいーかーらー」
「いや、耳が遠いわけじゃないです。意味が解らないだけです」
「ええと、”未来”というのはですね、時の経過を三つに区分したうちの一つで…」
「いや、単語の意味も解っています。わざとやってますか」
「はい。すみません」
「まぁ別にいいですけど」
「えーとですね、私本当に未来から来たんです。未来人なんです」
「はぁ。そうなんですか」
「SFの世界なんです」
「自分で”フィクション”って言っちゃダメでしょ」
「どうも、朝比奈みくるです」
「思いつきで喋るのやめてもらえませんか」
「はい。すみません」
「いいですけど」
「うーん、どうしたら信じてもらえますかねー」
「とりあえず、その”毎日新聞”のロゴがついたパーカーが信憑性をなくしていると思います」
「あー。これ、こっちの時代に来てから強だt…入手したんですよね」
「今、強奪って言いかけましたよね?」
「あ、ほら、ターミネーターみたいな感じですよ」
「思いっきり強奪ですよね」
「はい。すみません」
「いや、今回は”いいですけど”じゃ済まされないかと」
「さすがに私も、全裸でうろうろするのは嫁入り前の娘としてまずいと思って、必死だったんです」
「全裸で登場するところからターミネーターと同じだったんだ」
「ダダンダンダダン、てBGMも同じですよ」
「BGMをつける意味が解らない」
「とにかく、本当に未来から来たんですよぉ」
「うーん… じゃあ何か未来のこと教えてくださいよ」
「あ、はい! なんでも聞いてください!」
「なんでもいいのか。歴史が変わるとか、そういう危惧は一切なしか」
「タイムパラドックスが怖くて未来人なんてやってられるかって話ですよ」
「豪快ですね… えーと、じゃあ日本は将来どうなりますか」
「なくなります」
「えー!」
「やっぱりあれですね、平和を追求しすぎていざ有事に対応できなかったのが痛かったですね」
「え、じゃあ何、未来では世界戦争か何かが起こるんですか?」
「いえ、マツコ・デラックスが大暴れして日本列島が沈没します」
「えー!」
「いやー、あの事件は衝撃的でしたね」
「衝撃的どころじゃないと思うんですが…ていうか凄いなマツコ・デラックス」
「ですよね。前年には一人で中国軍を壊滅させてますしね」
「うそん!?」
「ランボーも真っ青ですよ」
「そりゃそうでしょうけど… え、じゃ日本人はどうなるんですか?」
「壊滅させた中国本土を乗っとりました」
「うわー、すっごいちゃっかりしてるー」
「新たな国家”新日本”を立ち上げましたね」
「なんかプロレス団体みたいな名前になってるんですが」
「ちなみに初代新日本首相は加藤清史郎さんです」
「こども店長!?」
「はい。晩年までこども首相として親しまれました」
「というか、晩年はもうこどもじゃないよね?」
「いや、でもこども首相はすごいですよ。たった2年で世界全体の景気を高騰させましたからね」
「へぇー」
「キャッチフレーズは”新日本は減税、補助金も”です」
「とうとうそれを設定する側に回ったのか」
「まぁ、その後政権がリコールされましたけど(笑)」
「上手く言ったつもりですか」
「すみません」
「あー、じゃあタイムマシンはいつ頃できるんですか」
「そうですねー、時間移動のできる手段が実用化されるのは今からおよそ20ウィッシュ後くらいですね」
「は?」
「20ウィッシュ後です」
「なんですか、そのウィッシュって」
「あ、そうか。この時代はまだウィッシュって単位が発明されていないんですね。すみません」
「あ、時間の単位なんだ」
「はい。超時空間研究の第一人者である内藤大湖氏が考案したんです」
「…えーと…まさかとは思うけど、それ、あのDAIGOのことなのかな…」
「はい! 若い頃は音楽家だったらしいですね!」
「えーまじでー。いや、ウィッシュの段階で薄々気づいてたけど」
「この時代の単位に合わせると… うーん、すみません、わかりません」
「ええー」
「メートルとフィートぐらい基準が違うんですよね」
「うーん、じゃあそのタイムマシンは誰が発明するんですか」
「井本絢子博士です」
「イモトアヤコ…珍獣ハンターじゃん!」
「はい! 若い頃は探検家だったらしいですね!」
「探検家。未来からはそういう認識なんだ」
「技術が確立した瞬間の名言”っしゃー! 本当にできた! 超すげぇ!”は有名ですよ」
「またよりによって中身のない発言が後世に残ったもんですね」
「その日は時空間移動技術に革新をもたらした日として、祝日になっているくらいです」
「そうなんだ」
「はい。珍獣の日です」
「いや、もうそれタイムマシンもイモトも関係なくなってるから」
「年月を経るうちにそうなっちゃったんですよね」
「そうですか… で、結局その未来人さんが僕に何の用なんでしょう」
「あ、はい、えーっとですね。実は、あなたが今話した未来の鍵を担っているんですよ」
「えー!」
「あなたが動かないと歴史が変わってしまいますので、私がそのお手伝いに参りました」
「いやいやいや。いきなりそんなこと言われても困るんですが」
「動いていただかないとこっちが困るんです」
「ていうかこども店長が首相やってイモトがタイムマシン作るような未来を俺に託されても…」
「あなたがきっかけで全てが回り始めるんです」
「えー… 参ったな。俺何したらいいんです?」
「はい、とりあえずマツコ・デラックスのところへ行ってもらってですね」
「いーやーだー! 絶対いーやーだー!!」