ショートコント:一見迷信のようで結構核心をついてくるおばあちゃん
(2024/1/10作)


孫「いたっ! …あれ、切り傷ができてる。いつ切ったんだろう」

婆「ああ、それは"かまいたち"だねぇ」

孫「かまいたち?」

婆「両手が鋭い鎌になっているイタチの妖怪だよ」

孫「えーっ。嘘だぁ。そんなのいるわけないよ。
  そのかまいたちに切られちゃったって言うの?」

婆「いや、かまいたちはその妖力で冷たい風を出すんじゃ」

孫「え」

婆「それにより急激に冷やされた人間の皮膚が変性して収縮し、
  裂けて傷ができてしまうんじゃ。まぁあかぎれと同じじゃな」

孫「両手が鎌になっている意味とは」



孫「うわっ! カミナリだ、怖いよおばあちゃん」

婆「よしよし、こっちへおいで。そしておへそを隠しなさい」

孫「おへそを?」

婆「そうじゃ。おへそを出していると雷様に取られてしまうよ」

孫「えーっ。嘘だぁ。そんなことあるわけわけないよ」

婆「雷様が鳴っているということは天気が悪く、気温も下がるじゃろう。
  そんな変化の中でおへそを出していると、冷えてお腹を壊してしまう。
  雷様はそんなお腹を壊した子のおへそが大好物なんだよ。
  だからお腹を冷やさないよう、おへそを隠しなさい」

孫「カミナリさま、趣味悪いね」



婆「なまんだぶなまんだぶ」

孫「おばあちゃん、いつも仏壇にお祈りしてるね」

婆「そうだよ。こうして毎日お念仏を唱えていれば、ご先祖様が喜ぶんだよ」

孫「えーっ。嘘だぁ。そんなことで喜ぶかなぁ?」

婆「孫ちゃん、ご先祖様を供養するって言われても、どうしたらいいか分からないだろう?」

孫「えっ。まぁ、うん」

婆「宗派にもよるけれど、宗教はその方法を定義しているんだよ。
  そしてうちの宗派はお念仏を唱えることなのさ。
  それを信じて実践することで、供養しているという実感が生まれて
  おばあちゃんは安心できるんだよ。
  そしてご先祖様は、自分の子孫が安心して生きていることを喜んでくれるんじゃ」

孫「そうなんだ… じゃあもし逆立ちして踊るのが教義の宗教だったら」

婆「おばあちゃんはここでカポエラーみたいな動きをしていただろうねぇ」

孫「良かったね、お念仏で」

婆「そうだね。ご先祖様も「逆立ちは疲れるな」と思って楽な宗派を選んだんだろうねぇ」