ショートコント:人類総能力者社会
(2023/9/2作)
「超能力っていいよなー。俺も使えるようになりたいわ」
「……ごめん、今まで黙ってたんだけど僕、能力者なんだ。」
「まじで!?」
「というか、世界中の全人類がみんな能力者なんだと思う」
「全人類!?」
「うん。でも誰もそのことに気付いていないだけなんだ」
「いやいやいや。さすがにそれはあり得なくない?」
「どうしてだい」
「全人類が何億人いると思ってるんだ。さすがに誰か気付くだろ」
「気付かないのには理由があるよ」
「理由?」
「うん。僕が見た限り、全員メタ能力なんだ」
「メタ能力?」
「そう、他人の能力に干渉する能力のこと。
例えば、他人の能力を打ち消すとか、他人の能力をコピーするとか」
「えっ。そんなの漫画とかじゃ主人公級のチート能力じゃん」
「うん、漫画ならね。でも現実には誰も気付きさえしていない」
「なんで?」
「分かりやすい能力者がいないからだよ。
炎を出す能力者みたいなのが一人でもいれば話は違ったんだろうけど」
「んん? どういうことだ?」
「コピーするにしても打ち消すにしても、能力があることを知らないと何にもできないでしょ。
仮に能力が発動したとしても、その結果を確認できないし」
「あっ、確かに」
「だから自分にそんな能力があることも分からない。
それが全員に当てはまるから、誰も超能力の存在に気づけない」
「悪循環だな」
「観測できないものは存在しないのと同じなんだよね」
「…ん? じゃどうしてお前はそのことを知ってるんだ?」
「あぁ、それは僕の能力が"他人の能力を見る能力"だからだよ」
「あー鑑定能力ってやつか。なるほど、確かにそれもメタ能力だな」
「人混みとか眺めてると、メタ能力同士が反応しあって無意味に変化する様子が見えるよ」
「え、何それ面白そう。どんなの?」
「んー、例えば"他人と能力を入れ替える能力"がどんどんリレーされていくのとか」
(例)
A(入替能力)⇔B(××能力) C(△△能力) D(□□能力)
↓
A(××能力) B(入替能力)⇔C(△△能力) D(□□能力)
↓
A(××能力) B(△△能力) C(入替能力)⇔D(□□能力)
↓
A(××能力) B(△△能力) C(□□能力) D(入替能力)
「他の人の能力が順番にずらされていくの、巻き込まれた人はめっちゃ迷惑だな」
「"他人の能力を○倍にする能力"の人たちがたまたま集まっちゃって、
数字がどんどんインフレしていくのとか」
(例)
A(2倍能力) B(3倍能力)
↓A:2×3=6
A(6倍能力) B(3倍能力)
↓B:6×3=18
A(6倍能力) B(18倍能力)
↓A:6×18=108
A(108倍能力) B(18倍能力)
↓B:108×18=1944
A(108倍能力) B(1944倍能力)
「これ最終的にとんでもない数になるんじゃないか」
「"他人の能力を一時的に反転させる能力"と"異性の能力のみ相殺する能力"が
干渉しあってお互いON/OFFを繰り返すのとか」
(例)
♂A(反転能力) ♂B(異性能力相殺)
↓A⇒B:反転
♂A(反転能力) ♂B(同性能力相殺)
↓B⇒A:相殺
♂A(××××) ♂B(同性能力相殺)
↓A⇒B:反転解除
♂A(××××) ♂B(異性能力相殺)
↓B⇒A:相殺解除
♂A(反転能力) ♂B(異性能力相殺)
:
※=最初の状態に戻ったため以下繰り返し
「無限ループ怖い」
「"相手を自分の能力で上書きする能力"の人が"能力を反射して返す能力"の人に反射されて、
延々と自分の能力を上書きし続けるのとか」
(例)
A(上書能力) B(反射能力)
↓A>B上書
↓A<B反射
A(上書能力)[NEW!] B(反射能力)
↓A>B上書
↓A<B反射
A(上書能力)[NEW!] B(反射能力)
:
「虚しすぎる」
「まぁ全員メタ能力なせいで、実害は一切ないんだけどね」
「まじか。俺たちに見えないだけで、裏じゃそんなことになっていたとは」
「そう。だから君も、実は既に能力者なんだよ」
「そうだったのか…… ちなみに俺の能力は何?」
「"全世界の人の能力をランダムなメタ能力にする能力"」
「俺が原因じゃん」