ショートコント:イメージック・ラブ
(2005/09/27作)



「いらっしゃいませー」
「あ、ど、どうも」
「お客さんはこういうところ初めてですか?」
「は、はい。話には聞いていましたが、イメクラってこういうところなんですね」
「じゃあ、どういうところかはご存知なんですね?」
「はい。何かシチュエーションを設定して、その役になりきるプレイだと」
「その通りですよ。そんなに緊張しないで、楽しみましょうね」
「は、はい!」
「それで、どんなシチュエーションがお好みですか?」
「はい、それじゃ、悪の秘密結社のボスと女幹部という設定で」
「…は?」
「ガオレンジャーで言えばシュテン様とツエツエみたいな」
「えっと…すみません、特撮はよくわかりません…」
「あ、そうですか。それじゃあわかりやすいところで」
「はい、はい」
「のび太としずかちゃん」
「…あの、もうちょっと幅の広い設定をお願いできますか」
「えーっと…というとどういう感じでしょう…?」
「お医者さんとナースとか、社長と秘書とか、教師と生徒とか」
「あ、そういうことですか。すみません、不慣れなもので」
「いえいえ。こちらこそ至らなくて恐縮です」
「それじゃあ僕教師やりますんで、生徒の方お願いします」
「はい、わかりました」

「オホン。では授業を始めます。君、号令を」
「はい。起立。礼。着席」
「はーいおはようございます。えーと、出席はと…今日欠席してる者手を挙げてー」
「うわ、定番のギャグ」
「ん、全員出席と。はーいはいはい、しずかにー(手を叩きながら)」
「やるやる」
「まだ三人しゃべってる」
「言う言う」
「はい、では数学の教科書22ページを開いて」
「はい」
「今日は27日だから、2列目で7番目の人から当てるからなー」
「わぁ、あるある」
「えー、さて前回は関数の接点における接線の傾きを求めるために微分を使用して…」
「……」
「これにより変化を数式で表現することができるわけであり…」
「あ、あの、先生…」
「ん。なんだね」
「えーっと…この展開ですと、いつその…そういう状態になるのかなぁって…」
「そういう状態? 何を言っとるんだ君は?」
「え、いや、だからあの」
「ところで君、宿題はちゃんとやってきたんだろうね?」
「え!? し、宿題ですか!?」
「そうだ。21ページの総合問題2の(3)以降をやってきなさいという宿題を出したはずだが」
「何、そのリアルすぎる指定」
「やってきていないのならお仕置きしなければならないが…?」
…あ! あーあー、そういう展開ですか、なるほど」
「何がなるほどなのかね」
「えっと、すみません、宿題忘れました」
「忘れた? 何故だ」
「り、理由?」
「そうだ。何故かね」
「え…えーっと、その、宿題はやったんですけど、ノートを家に忘れて…」
「じゃあ今から家に行って取って来い」
「ええええー」
「ええー、じゃない」
「え、えっと、すみません、うっかり忘れていました」
「そうか。なら仕方がない。お仕置きだな…」
「は、はい!」
「廊下に立っとれ!」
「……へ?」
「聞こえなかったのか。廊下で反省してきなさい」
「え、あ、はい…」
「あーそれじゃ授業を続ける」
「…………」
「えーこのように微分とは導関数や微分係数を見つけることを指し…」
「…………」
「点xにおけるf(x)の変化率が、即ちその関数のその点における接線の傾きに該当するもので…」
「…………」

「…えーっと、お疲れ様でした」
「はい! ありがとうございました!」
「た、楽しかったですか?」
「はい! 廊下に立たせるの、夢だったんです!」
「そ、そうですか…」