ショートコント:ハーレ昔話
(2024/08/19作)


トントン

若者「へいへい」
女1「こんばんは」
若者「どちら様だべ?」
女1「突然ですが、私をお嫁にしてください」
若者「はい?」
女1「あなたは以前、働き者で何も食べない女房が欲しいと言っていましたよね」
若者「あぁ、酒の席でそんなこと言ったこともあったなぁ」
女1「私は何も食べなくても大丈夫なんです」
若者「えっ。 …拒食症?」
女1「いえそういうのではなく」
若者「食べずにどうやって生きとるんだ? 点滴か?」
女1「あんまりそこ科学的に掘り下げないでいていただけるとありがたいです」
若者「だべか。じゃあ光合成できる能力を持った人間ということにしとくか」
女1「もうそれでいいです。どうかお嫁にしてくださいませんか」
若者「え…えぇー…うーん…」
女1「え、そんなに悩まれると思わなかった」
若者「いやぁ…ありがたいっちゃありがたいんだが…そのぉ…」

女2「どうかなさったのですか旦那様? おや、貴女は?」

女1「は!? え、誰!?」

女2「わたくしは旦那様の妻です」
女1「妻!? えっ結婚してたんですか!?」
若者「いやいやいや、ちょっと待ってけれ。妻じゃねぇよ妻じゃ」
女1「え?」
若者「実はこの人昨日うちに来てな。お嫁にしてくださいちゅうだよ」
女1「まさかのかぶり」
女2「わたくしは旦那様の妻になるため、ここへやってきたのです」
若者「んだどもオラはまだ答えてねぇだ。会っていきなり嫁ちゅわれても困るだよ」
女1「ですよねぇー」
女2「どの口が」

若者「他に行く当てがねぇっつんで、とりあえず泊まってもらっとるんだ」
女1「でしたら、そんな女より是非私の方ををお嫁にしてくださいな」
若者「え」
女1「よく働きますよ私。そこの青白い顔の女と違って」
女2「何ですって?」
女1「なんかいろんな意味で冷たそう。太陽の光に当たったら溶けちゃったりして!」
若者「おいおい、ちょっと喧嘩は…」

女2「な。なななな。ななな何を言って」(ダラダラダラ

若者「あれ?」
女1「あっれーぇ? どうしたんですかぁー? もしかして図星ぃー?」
若者「まさかお前… あの時の雪女…?
女2「…くっ。貴女こそ、本当に何も食べないのかしら?」
女1「えぇ、そう言っているじゃないですか。この口は何も食べませんよ」
女2「この口は、ねぇ。まるで別の口では物を食べるように聞こえますわね」
若者「え? 別の口? 下ネタ?」
女2「ちょっと黙っていてくださいまし」
若者「すまん」

女1「……」

女2「黙秘ですか? なんなら、その髪の毛の中に隠されたお口
   喋っていただいても構わないのですよ?」
若者「えっ」
女1「…まったく。せっかく隠していたのに台無しじゃないですか」(クパァ
若者「ひぃぃっ!?」
女1「あーあ。よりによって、どうして獲物が被るかなぁ」
女2「勘違いしないでくださいまし。わたくしは本当に妻になるために来たのです」
女1「私だってそうよ。まぁ、最終的には全部美味しくいただきますけど?」
女2「させませんわ」
女1「やるかい?」
若者「待ってついていけない。オラの家でいきなりバトル始めないでけれ」

トントン

若者「へいへい」
女3「こんばんは」
若者「どちら様で」
女3「あの、わたしをお嫁にしてもらえませんか! 綺麗な機を織りますよ!

女1「あ?」
女2「は?」
若者「え?」

女3「あれ? どういう状況ですこれ?」

女1「引っ込め鳥類」
女2「お前は亀と一緒に長生きしていなさい」
若者「あー。もしかしてあの時助けた鶴だべか」

女3「ヒント出して恩返しを台無しにするのやめてもらえません!?」