ショートコント:天使の導き
(2006/07/20作)
私は天使。
間違っている人を正しい道に導くのがお仕事なの。
ほら、今日もまた、私を必要としている人がいるわ。
「ううっ。どうせ、どうせ俺なんて」
「元気出せよ。女にふられたくらいで」
「俺もうだめだよ。一生独り者で生きていくんだ」
「きっともっといい女がいるさ。世の中の人間の半分は女なんだぜ?」
「そ…それもそうだよな!」
『違いますよ』
「だ、誰だお前!?」
『私は天使。間違っている人を正しい道に導くのがお仕事』
「て、天使…?」
『はい。世の中の人間の半分は女性…それは間違いです』
「へ」
『世界の人口を統計で見ますと、大体男:女の割合は七:三が相場』
「は、はぁ」
『男の数は女の二倍以上、世の中男は過剰気味なんですねー』
「……やっぱり俺、一生独り者なんだ…ぐすん。ぐすん」
「お、おいお前っ、せっかくこいつが元気出しかけてたのに…」
『はい、お勉強になりましたね。では、さらばですっ』
「ちょ、待てこら」
『しゃららしゃらりこきらきらりーん』
「なんだそのふざけた消え方はっ!!」
「はいみなさん、いいですかぁ。注目。
人という字は、このように人と人とが支えあってできています。
人は一人では生きられません。支えあい助け合って生きていかねばならないのです」
『それは違いますよ、先生』
「あ、あなたは、なんですかぁ!」
『私は天使。間違っている人を正しい道に導くのがお仕事』
「天使!?」
『人という字は人と人とが支えあっている形からできた…それは間違いです』
「な、なにを言っとるんですか君はぁ」
『人という字は、本来人が歩いている姿から作られた漢字なのですよ』
「え。あ、いや」
『あと、人は一人でも生きていけますよ。戦後何十年も一人でサバイバルしてた方いましたよね』
「いや、そりゃいましたけど! 今はそういう話をしているわけでは…」
『はーい、勉強になりましたね。ではさらばですっ。どろろーん』
「ごほっごほっ、煙幕!? いや、チョークの粉!?」
「アハハ、笑点はやっぱり面白いなぁ。明日からまた頑張ろうって気になるよ」
『あ、それ放送作家がシナリオ考えてるんですよ』
「頑張る気萎えたー!」
私は天使。
今日もまた間違っている人たちを正しい道に導いたわ。みんなも困っている人がいたら助けてあげてね。
いいことすると、本当気持ち良いわ!