ショートコント:そして誰もいなくなった
(2007/05/13作)


<キャスト>
探偵    やり手の探偵。水虫の薬を購入して効果を比較するのが日課。
刑事    本事件担当の刑事。禁煙四日目だが、実はこっそり吸ったため本当は二日目。
部下    刑事直属の部下。最近アデランスの毛髪診断を受けた。
山田権介 山田財閥の主で本事件の被害者。メタボリック症候群の意味をこないだ知った。
山田一義 被害者の息子。フリーセルの1941番が解けずにイライラしている。
山田二美 被害者の娘。昔サムライトルーパーの同人誌を作ったことがある。
山田三郎 被害者の息子。痔。
井沢紀子 被害者の館で働くメイド。若井おさむのネタで爆笑するが、ガンダムは良く知らない。
斉藤和夫 被害者の館で働く執事。孫と携帯でメールをやりとりするが、ハートの絵文字だらけ。


刑事「山田三郎、お前を逮捕する!」
探偵「待ってください、刑事さん」
刑事「探偵くんか。何だね」
探偵「私には全ての真実がわかりました。彼は犯人ではありません」
刑事「何をバカなことを。全ての証拠が犯人は彼だと示しているんだぞ」
探偵「しかし彼は犯人ではありえないのです」
刑事「なぜだね」
探偵「彼は犯行時刻…2km離れたマンションで昔の彼女を殺害していたのです!」
刑事「なんだってー!」
探偵「従って、彼にはこの現場で被害者を殺害することは不可能。三郎はシロです」
刑事「し、しかし井沢紀子の証言はどうなる。彼女は館の廊下を歩いている三郎を目撃しているんだぞ」
探偵「その証言は偽証です」
刑事「何」
探偵「なぜなら紀子もその時間、その場所にはいなかったからです」
刑事「なぜそんなことが言えるんだね」
探偵「紀子はその時、裏山の社に呼び出したメイド派遣会社の上司を殺害していたのです!」
刑事「なんだってー!」
探偵「従って、三郎を目撃することは不可能というわけです」
刑事「むむむ。おい、三郎と紀子をそれぞれ別件逮捕だ!」
部下「はっ!」
刑事「だがそうなると、権介を殺したのは一体誰なんだ。探偵くん」
探偵「お答えしましょう。権介を殺した犯人、それは…」
刑事「ゴクリ」
探偵「権介本人です!」
刑事「なんだってー!」
探偵「権介氏は自殺だったのです」
刑事「そんなバカなことがあるか。権介氏に刺さったナイフからは指紋を拭き取った後があるんだぞ」
探偵「それは、死体第一発見者の執事・斉藤和夫が拭き取ったのです」
刑事「なぜそんなことを」
探偵「それは…そのナイフは、斉藤和夫が奥さんを殺傷する際に使用した凶器だったからです!」
刑事「なんだってー!」
探偵「彼はそのナイフの指紋から自分の犯行が発覚することを恐れ、指紋を拭き取ったのです」
刑事「むむむ。おい、執事の斉藤を別件逮捕だ!」
部下「はっ!」
探偵「しかし、自殺だとすると遺書があっても良さそうなものだが」
刑事「遺書は存在しました。しかし執事の斉藤が警察へ連絡しに行った間に、二美が処分したのです」
探偵「なぜだね」
刑事「その遺書の裏には、二美の犯した横領事件の全てが記されていたからです!」
探偵「なんだってー!」
刑事「彼女は遺書の裏から自分の犯罪が発覚することを恐れ、遺書を処分したのです」
探偵「むむむ。おい、山田二美を別件逮捕だ!」
部下「はっ!」
刑事「待てよ、そういえばなぜこの部屋には争った跡があるんだ」
探偵「それは山田一義の仕業ですね」
刑事「そうなのか」
探偵「山田一義は事件の起こる直前にここから山田権介の隠し持っていた裏金を盗み出したのです」
刑事「なんだってー!」
探偵「山田権介の自殺の動機もそれでしょう。裏金が発覚したと錯覚し、絶望の余り自ら命を絶った」
刑事「なんてことだ。権介氏も罪を犯していたのか。とりあえず山田一義を逮捕だ!」
部下「はっ!」
刑事「ふう。とりあえずこれで事件は解決だな。ありがとう、探偵くん!」
探偵「まだですよ」
刑事「何」
探偵「刑事さん。この事件が自殺だとすると、もう一つ謎が残る。権介氏が受け取っていた例の脅迫状です」
刑事「むっ」
探偵「あの手紙で権介氏は平常心を失い、自殺へ到った一因となっているはずです」
刑事「差出人が誰なのか、君にはわかったというのかね」
探偵「はい」
刑事「ほう、面白い。聞かせてもらおうか」
探偵「脅迫状を送りつけていた犯人、それはあなたですよ刑事さん」
刑事「なんだって?」
探偵「あなたは権介氏に恨みを抱いていた。だから彼に嫌がらせの手紙を送りつけていたのです」
刑事「…ふっ。そこまでバレていたとはな。さすがだよ探偵くん」
探偵「ありがとうございます。…君、刑事さんを」
部下「は、はいっ。…非常に残念ですが」
刑事「すまなかったね。それじゃ、行こうか」
探偵「待ってください」
刑事「…まだ何か?」
探偵「刑事さんではありません。部下のあなた」
部下「へ」
探偵「あなた、この現場に放置されていた二万円をくすねたでしょう」
部下「うっ」
刑事「なんだってー!」
探偵「事件に関係ないからと言って、現場のものに手を付けてはいけませんよ」
部下「す、すみません。つい出来心で」
刑事「まったく…君というやつは。じゃあ一緒に行こうか」
部下「あ、ちょ、ちょっと待ってください。探偵さん」
探偵「なんだい?」
部下「あの、あなたが表に停めている車、盗難車ですよね?」
探偵「し、しまった。バレたか」
刑事「なんだってー!」