ショートコント:ふしぎの国のアリス
(2006/07/11作)


 ある晴れた昼下がり。
 少女アリスは時計を見ながら走っていく白兎を目撃し、追跡する。
 そしてそのまま穴に落ち、見知らぬ土地に迷い出てしまったのだった。

アリス 「困ったわ。一体ここはどこかしら」
いもむし「やぁ、お嬢ちゃん。ここがどこか知りたいかい」
アリス 「ええ。教えてほしいわ」
いもむし「知っているがお前の態度が気に入らない」
アリス 「殴るわよ」
いもむし「ここはふしぎの国さ」
アリス 「ふしぎの国?」
いもむし「知っているかい。SFってのは"少し不思議"の意味なんだぜ」
アリス 「それは藤子不二雄の世界の話だし、そもそも今関係ない知識ですよね」
いもむし「へへ…お嬢ちゃん、やるね。いいツッコミを返すじゃねぇか」
アリス 「あんまり嬉しくない」
いもむし「そんなお嬢ちゃんには、プレゼントをあげよう」
アリス 「あら何かしら」
いもむし「このキノコだ。赤いキノコを食べれば体が大きくなる」
アリス 「まぁそれは不思議」
いもむし「青いキノコを食べれば体が小さくなる」
アリス 「食欲をそそらない色合いのキノコね」
いもむし「緑のキノコを食べれば1UPだ」
アリス 「えっ。ちょ、1UPって何」
いもむし「紅茶キノコはブームがとっくに過ぎたから注意しな」
アリス 「ブームていうかそんなのあったわねレベルなんですけど」
いもむし「金色に輝くキノコは食えないから注意しろ。歯形は付くけど」
アリス 「それ本当にキノコ? 金塊じゃないの?」
いもむし「黒いキノコは体の一部分だけ大きくなる」
アリス 「一部分ってどこが?」
いもむし「それは俺の口からは言えない」
アリス 「下ネタ?」
いもむし「腐ったキノコのような色をしたキノコは腐っているから注意しろ」
アリス 「わりかし当たり前のことを言うわね」
いもむし「腐ったみかんのようなキノコは排除しろ。ほっとくと他も腐るから」
アリス 「金八先生に真っ向からケンカ売る発言だわ」
いもむし「透明なキノコは見つけられるもんなら見つけてみろ
アリス 「何の挑戦よそれ」
いもむし「アッチョンプリケと叫ぶキノコは必ず傍に天才外科医がいるぞ」
アリス 「それはキノコじゃなくてピノコ」
いもむし「どうでもいいが、某スポーツ新聞が王監督の手術を報じた時にさ」
アリス 「本当にどうでもよさそうな話ね」
いもむし「手術を執刀した先生のことを"ブラックジャック"って表現してたんだよ」
アリス 「はぁ」
いもむし「失礼じゃね? ブラックジャックって闇医者だぜ?」
アリス 「そんな細かいことまで考えてないんでしょ」
いもむし「俺、見出しを見た時、監督の手術はヤバイ人がやってたっていう告発かと思ったもの」
アリス 「単に天才外科医ってとこだけ強調したかったんでしょうね」
いもむし「で、なんの話だっけ」
アリス 「キノコの紹介。ていうかもうどうでもいいんだけど」
いもむし「まだまだあるぜ」
アリス 「まだあるの?」
いもむし「この小さいキノコはマッシュルームだ」
アリス 「普通のキノコね」
いもむし「マッシュルームを馬鹿にすんなよ」
アリス 「別に馬鹿にはしてないけど」
いもむし「こいつには地球で一番強力な発癌性物質が含まれてるんだぞ」
アリス 「えっ。そ、そうなの?」
いもむし「バケツ一杯のマッシュルームを毎日食い続けたら癌になる」
アリス 「それ、癌以前に別の要因で病気になると思う」
いもむし「ビートルズとよく似てるから間違えないように」
アリス 「間違えないよ。髪型がマッシュルームカットなだけじゃない」
いもむし「大木凡人と間違えないように」
アリス 「間違えないよ!」
いもむし「南海キャンディーズの山ちゃんと…」
アリス 「間違えないよ!!」
いもむし「あー、あとこのきなこ色のキノコはきなこ味のキノコだ」
アリス 「…はい?」
いもむし「このきなこ色のキノコはきなこ味のキノコだ」
アリス 「このきなこ色のキノコはきなこ味のキノコなのね」
いもむし「そう、このきなこ色のキノコはきのこ味のキナ…」
アリス 「ニヤリ」
いもむし「そ、そうそう、こっちはチョコ味の…」
アリス 「きのこの山ね」
いもむし「な、なにィィィ!! マイナス一秒ツッコミだと!!」
アリス 「ふっ。あなたのボケは既に見切った。トドメよ!」
いもむし「くっ…!!」
アリス 「あんたとは…やっとれんわーーー!!(裏拳)」
いもむし「ぎゃああああああああああ!!」

 こうして第一の刺客いもむしを退けたアリス。
 だが冒険の旅は始まったばかりだ。
 行け、アリス! 負けるな、アリス!
 自分の世界に戻るために!!
                                 <つづく>



 …おかしいな。こんな話を書くつもりじゃなかったのに。どこで間違えたんだろう。