ショートコント:八百万の神
(2006/04/04作)


「ちゃりーん。ぱんぱん」
「おーおー感心なことじゃのぅ」
「わ、びっくりした。誰ですかあなた」
「わしか。わしはこの神社の神じゃ」
「えっ」
「お前さんのような若い人がお参りに来るのが珍しくてな。それでつい」
「私に会いにきて下さったんですか!」
「いや、背中にバカって書いた紙を貼りに来た
「なんでだよ! なんで地味に虐められなきゃいけないんだよ!」
「えー、だってー、どーせお賽銭わしのものになんないしー」
「うそん!?」
「ほんとほんと。神主の総取り。宗教法人は税金かからないし」
「そんな生々しい話されるとお参りする気なくすなぁ…」
「いやでも若いのに感心だな、とは思ったぞよ。だからご褒美に…」
「えっ」
「知り合いの神様紹介したげる」
「あなたは何もしないんですね」
「待っとれ。三人ほどいい子紹介したげるから」
「いい子言うなよ」
「ごきげんよう」
「早っ。えっと、あなたは?」
「私セレブの神でございます」
「せ、セレブの神?」
「はい。貧乏で惨めで社会の底辺でニートな貴方をゴージャスにするために参りました」
「悪かったな社会の底辺で。で、具体的にどうしてくれるんですか」
「百聞は一見にしかず。それでは参ります。しゃらんら〜」
「わっ。こ、これは…」
「常にバックにキラキラを背負うように致しました。まぁゴージャス!」
「要らない!(キラキラ) 果てしなく要らない!(キラキラ) うわぁ気持ち悪っ!(キラキラ)」
「お気に召しませんか」
「召さないよ!(キラキラ) ていうかこれじゃ眩しくて寝られない!(キラキラ)」
「お役に立てなくて残念ですわ。それでは私はこの辺でオホホホホ」
「えええー!(キラキラ) いや、せめて元に戻してけよ!(キラキラ)」
「あ…あのー…」
「えっ、あ、えと、あなたは?(キラキラ)」
「うわ、キラキラしてる! 怖い! 来ないで! えい!」
「あ、キラキラが消えた」
「ふう…怖かった…」
「あ、ありがとう。もしかしてあなたも神様?」
「はい、私、暗黒の神です」
「暗黒!?」
「はいっ。この世の全てを闇に帰すのが私の夢ですっ」
「いや、そんな物騒な夢を爽やかに語らないでくれますか」
「えっと、何かしてやれって頼まれてきたんですけどぉ…何したらいいですか?」
「何って聞かれても…何が出来るの?」
「はいっ、闇に帰すことが出来ますっ!」
「いや、それは迷惑だから」
「はうー…あ、白髪ありますよ。黒くしましょうか」
「え、し、白髪?」
「はいっ。私暗黒の神様ですから!」
「そ、そういうものなんだ…じゃお願いします」
「はいっ! えーと、まっくろくろすけでておいでー」
「その呪文は黒だからか。黒だからなのか」
「はいっ、綺麗に染まりましたぁ!」
「あ、ありがとう」
「いえいえ、どーいたしましてっ。いやー、いいことすると気持ちいいですねー」
「あんたの夢、絶対叶わない気がするよ」
「じゃ、私はこれで。もうすぐ最後の三人目がいらっしゃると思います」
「いや、もういいっす。悪い予感しかしないし、ってもういない」
「そなたがここの神が言っていた感心な若者だな」
「チェンジ」
「そんなシステムはないぞ」
「だってこの流れで三人目ってどうせ貧乏神か何かでしょ?」
「否。私はカレーの神であるぞよ」
「か、カレー!?」
「さよう。……ふむ」
「な、なんですか。人の目をじっと見つめて」
「そなた…そなたの目には良きカレーが宿っておるな」
「嫌だよ。なんか痛そうだよ」
「うむ。ではそなたに褒美をやろう」
「…カレーなんだろうなぁ。まぁ一食分食費が浮くと思えば」
「木彫りの熊だ」
「もうツッコミどころすらわからない」
「ではさらばだ。これからもカレー道を精進せいよ!」
「いや、俺別にカレー極めたいとか思ってないっす。…なんだったんだ一体」
「ほっほっほっ。どうじゃったかね」
「あっ、この神社の神様。いや、どうもこうもぜんぜん嬉しくないですよ」
「おやおや。それは済まなかったのう。まぁわしに免じてここは水に流してくれ」
「そんな無責任な。水に流せって…水に…? ま、まさかあなたは…!!」
「うむ。トイレの神(紙)じゃ!」
「…三角に折っていいですか」
「ごめんなさい」