ショートコント:ふしぎちゃん 〜クリスマス編〜
(2006/12/25作)
「ぱーん。れーじくん、おかえりー!」
「わ、びっくりした。なんだ、ふしぎちゃんか」
「あはははは。お誕生日おめでとー!」
「え。いや、僕の誕生日今日じゃないんだけど…」
「うん、知ってるよ。ほら、今日はクリスマスじゃない」
「ああ、なるほど。確かに本来の意味で言えば誕生日だね」
「でしょっ。サンタさん、お誕生日おめでとー!」
「いやいやいや。それは間違えてる」
「あれ? トナカイさんの誕生日だっけ?」
「そんなわけないだろ。クリスマスはイエス・キリストの誕生日」
「誰?」
「うわ」
「まぁいいじゃんいいじゃん。ほら、パーティーの準備したんだよー」
「お、すごい豪華じゃん。これ、ふしぎちゃん一人でやったの?」
「えっへん」
「すごいなぁ」
「業者に頼んだ」
「すごくないな。なんで威張ったのか解らない。豪華じゃなくていいから自分でやろうよ」
「難しいこと言うね」
「そんなに難しいこと言いましたか僕」
「でも、じゃーん。お料理はあたしが作ったんだよー」
「へぇー」
「ほらほら、早く食べてみて」
「うん、じゃあいただきまー…」
「ばちん!」
「いたっ」
「ダメでしょ! ご飯の前にはお手々洗わなきゃ!」
「いや、自分が食べろって言ったんじゃん」
「はい、亀の子石鹸」
「今時亀の子石鹸のある家も珍しいよね…ていうか誰も知らないんじゃないか、もう」
「はい! じゃ改めていただきまーす」
「いただきまーす」
「ほらほら、美味しいよ。あたしお手製の精進料理」
「えー!? なんでー!? どうしてクリスマスに精進料理!?」
「ほえ?」
「いや、クリスマスって言ったら普通チキンとかターキーとかさ」
「…ぐす…」
「え」
「…お豆腐、嫌い?」
「いや、嫌いじゃないけど…んー、まぁいいか。精進料理でも」
「枝豆、美味しいよ」
「うん、美味しいね」
「えへへー。あ、そうだ、せっかくクリスマスなんだから音楽かけよう音楽」
「あー、いいね。陽気なクリスマスソングで盛り上がろう」
「♪I'm dreaming of a white christmas...」
「いきなり暗い曲来たね。いや、確かにいい曲だけども」
「んー、やっぱにぎやかな方がいいかな」
「うん、その方が絶対いいと思うよ」
「よし、じゃ一緒に歌おう」
「歌うんだ。CDかけるんじゃないんだ」
「あたしの持ってるCDって、後は森田童子くらいしかないから」
「意外すぎてリアクション取れないよ」
「じゃあ、ジングルベルを歌おー!」
「ベタだけど、そういうのがいいね。おー」
「せーの。♪ジンジンジングルベル、ジンジンジングルベル、メッリークリースマス」
「森高千里じゃん。ベタどころか世間の人が覚えてるかどうかも怪しいよ」
「♪真っ赤なお花のー、彼岸花ー」
「違う。何もかもが違う。漢字も違うし季節も違うし何より歌詞が違う」
「♪きーよしー、にーしかーわー」
「なんできよし師匠を称える歌になってるの?」
「あっそうだ。ねねね、サンタさんってなんで赤い服着てるか知ってる?」
「ああ、それはコカコーラ社が…」
「ぶっぶー。真っ緑な服だと気持ち悪いからです」
「人の神経を逆なでするクイズだね」
「あっそうだ。ケーキ買ってあるの」
「いいね。食べようか」
「うん! はい、ウェディングケーキ」
「クリスマスケーキ買おうよ!」
「あ、大丈夫。見た目でっかいけど、食べられるところは一部分だけだから」
「そんな問題じゃなくて!」
「はい、苺あげる。あーん」
「あ……あーん」
「美味しい?」
「う、うん…」
「やった。はい、今度はダミー部分のボール紙、あーん」
「食べれないよ!」
「あとねー、プレゼントもあるんだよー」
「えっ」
「大好きなれーじくんのために、頑張ってくすねてきましたっ」
「既に不穏な空気が漂っているんですが」
「はいっ、USJにある日本一のツリーのてっぺんの星」
「戻してきなさい」
「えーっ」
「えーっじゃないよ! 取ってきちゃダメでしょそれは!」
「ぶー。そんなに怒らなくってもいいじゃん。冗談なのに…」
「え。あ、なんだ、冗談だったの?」
「うんっ。これは自分へのプレゼント」
「戻してきなさい。今すぐ。ただちに。即行で!」
「もう! 何よ! さっきから怒ってばっかり!」
「え」
「せっかく楽しいパーティーにしようとしてるのに! もう知らない! れーじくんのばーか!」
「あ、いや、その」
「ふんっだ」
「…ごめん。謝るから、機嫌直してよ」
「知らない!」
「あ、そうだ。実は僕もプレゼント買ってきたんだよ、ほら」
「え…あ、これって…!」
「うん。ふしぎちゃん、前から欲しがってたもんね」
「うんっ。わぁ、嬉しい嬉しい! ありがとう!」
「でも本当にそれが欲しかったの?」
「もちろん! 大事に使うね、ハムスターの籠についてるカラカラ回すやつ」
「うん、良かった、喜んでもらえて。何に使うのか知らないけど」
「えへへ。…あのね、これ、れーじくんへの、本当のプレゼント…」
「えっ」
「初めてチャレンジしたからあんまり上手じゃないんだけど…頑張って編んだんだ…」
「えっ、えっ。じ、じゃあ、ふしぎちゃんの…手編み?」
「うん」
「すごい。やった。わぁ、嬉しいな」
「へたくそだけど、笑わないでね?」
「うん、もちろん。笑うもんか。誰だって最初は初心者だよ」
「恥ずかしいな…えへへ。はい、どーぞ」
「わぁ、ありがとう!」
「うん! れーじくんも大事に使ってね、そのメガネ!」
「えー!? なんで!?」