ショートコント:ふしぎちゃんとバレンタイン
(2007/02/13作)


「…えっと。ふしぎちゃん、何してるの」
「きゃあ! 何見てんのよ、れーじくんのえっち!」
「いや、誤解招くような反応はやめてくれる?」
「よく見つけたね。さすがれーじくん、洞察力がすごいね」
「ジャングルジムの後ろに隠れても丸見えだからさ。てか隠れてたんだよね? 小さく前へ倣えしてたけど」
「擬態してたんだよ」
「何の」
「ケンタッキーのおじさん」
「普通ジャングルジムの後ろにケンタッキーのおじさんはいないよね」
「あーっ、そうか。それは盲点だった」
「それ以前の問題なんだけどまぁいいや。で何してたの」
「そうだよ。れーじくんがえっちだって話だよ」
「違うよ」
「だって今女の子からチョコレートもらってたじゃん! あたしと言うものがありながらよよよよよ」
「今時よよよよよって泣き方も珍しいなぁ」
「この浮気者! 不倫! ネクロフィリア!
「違うよ! そんな趣味ないし、そもそも今の子は死んでないよ!」
「モニターの前にいるネクロフィリアの意味がわからない良い子は深く詮索しちゃダメだからね」
「誰に言ってんの誰に」
「で、さっきの子は何者?」
「クラスの子だよ。義理チョコくれたんだ」
「いーや違うね。本命だね。間違いない。あたしにはわかる」
「ふしぎちゃんは僕を信じられないどころか進んで浮気者にしようとしてるよね」
「だって、わざわざ公園に呼び出して渡すのが義理なわけないじゃん!」
「いや、本人が義理だって言ってたし。というか呼び出されたこと何で知ってんの」
「壁に耳あり障子にふしぎちゃんって昔から言うでしょ」
「言わないよ」
「義理だなんて建前に決まってます。『こ、これ義理チョコなんだからねっ』ってツンデレ演出したんです」
「深読みし過ぎだって…」
「そんなことないもん! ちゃんとした証拠だってあるよ!」
「何?」
「あたしの勘」
「何を持ってちゃんとしたと言い張れるのかさっぱり理解できない」
「だってれーじくん格好いいもん! 学校でモテモテに決まってるもん!」
「いや、全然そんなことないってば」
「酷い! れーじくんはあたしの目が節穴だって言うのね!」
「どっちに転んでも非難されるわけ?」
「くすん、いいんだ。どうせ男なんてそうなんだ。女房と畳鰯は新しい方が良いんだ」
「惜しい。鰯が余計」
「いーもん。れーじくんのために買ったチョコレート、災害救援物資として送っちゃうもん」
「ふしぎちゃん」
「何よぅ」
「あの子の気持ちまではわからないけど、僕はふしぎちゃんが好きだよ?」
「……」
「だから、ふしぎちゃんのチョコ欲しいな」
「…本当に?」
「うん。実はすっごく楽しみにしてたんだ」
「…そう。うん、わかった。じゃあ重油5万トンと引き換えに許すよ」
「ふしぎちゃん、そのネタはあんまり使わないほうが良いと思うよ」
「えへへ。その代わり、ホワイトデーは3倍返しだよ?」
「うん、わかった」
「わぁ! さっすがれーじくん、太っ腹!」
「あはは、やめてよ」
「メタボリック症候群!」
「本当にやめてよ」

「楽しみだなぁ。30円の何をもらおうかな」
「わぁ。ふしぎちゃんが用意したの、絶対チロルチョコだ」