ショートコント:ふしぎちゃんとRPG
(2008/05/22作)
「れーじくん。あれが大魔王の住むお城だよ」
「いよいよだね、ふしぎちゃん」
「うん。お姫様と世界の平和を取り戻すため、一緒に頑張ろう!」
「おー!」
「待っててね、かぐや姫!」
「え、かぐや姫なの!? 囚われてるお姫様って」
「そうだよ。言ってなかったっけ」
「聞いてないよ。ていうかなんで中世ヨーロッパ風の世界にかぐや姫…」
「あっ、れーじくん、門の前にモンスターがいるよ!」
「門番かな。あいつを倒さないとお城の中に入れないんだね…」
「仕方ないね。勝手口に回ろう」
「勝手口!? 何、その庶民的な作りのお城」
「ほら、こっちだよれーじくん。三河屋さんを装って進入するんだよ」
「こんな鎧や法衣で武装した三河屋さんはいないと思うよ」
「ラッキー。誰もいないよ。進入し放題だね」
「なんか僕らの方が悪い人みたいな気がしてきたんだけど…」
「あっ」
「どうしたの、ふしぎちゃん」
「ここのキッチン、オール電化だ」
「電気通ってるんだ。もう世界観無茶苦茶だね」
「ビーッビーッビーッ」
「な、何!?」
「しまった! 大変だよれーじくん、警備システムに引っかかったよ!」
「随分ハイテクなんだね、大魔王の城って」
「セコムは凄いね」
「セコムなんだ」
「モンスターが現れたよ!」
「どうやら戦うしかないみたいだね…」
「どもー! 三河屋ですー!」
「いや、それでごまかし通すのはさすがに無理でしょ」
「くっ。ダメか」
「僕に任せてふしぎちゃん。全体攻撃魔法、ファイアーウォール!」
「おおー。一網打尽だねっ。さすが魔道士れーじくん!」
「あっ、まだ三匹残ってるよ、ふしぎちゃん」
「よーし、後はあたしに任せて!」
「うん、頑張って!」
「ツモ! リーのみドラ6! 倍満!」
「…何その攻撃。しかも物凄く腹の立つ上がり方」
「あ、あたしの職業、雀士だから」
「えー! 勇者じゃないの?」
「『勇者』なんて職業じゃないよ。何言ってるのれーじくん」
「…ふしぎちゃんにそんな正論吐かれるとは思わなかったよ」
「さぁ、れーじくん。この扉の向こうが大魔王の間だよ」
「いよいよだね」
「覚悟はいい?」
「うん」
「もう戻れないよ?」
「覚悟はしてる」
「回復アイテムもちゃんと持った?」
「うん、大丈夫」
「ガスの元栓締めた?」
「うん、締めた」
「宿題したか?」
「うん、したよ」
「風呂入ったか?」
「いい加減進もうよ。ドリフネタはもういいから」
「よし、じゃ行くよ… 突入ー!」
「おおー!」
「大魔王、覚悟ー!」
「単体攻撃魔法、フリーズ!」
「四暗刻ー!」
「単体攻撃魔法、ソニックブーム!」
「九蓮宝燈ー!」
「単体攻撃魔法、ジェットストリーム!」
「天和ー!」
「…なんかどんな戦いしてるのかちっとも想像がつかないんだけど…」
「あっ。大魔王が攻撃してきたよ」
「うっ、さすがに大魔王の攻撃はきついな…」
「大変! れーじくんのHPが残り少ないよ」
「お願いふしぎちゃん、回復アイテムを…」
「5000ゴールド」
「鬼か」
「嘘だよ嘘。はい、れーじくん、しっかり」
「あ、ありがとう…」
「うん。ちゃんと鼻に詰めてね」
「どんな回復の仕方なの、このアイテム」
「むむー、大魔王め。よくもれーじくんを!」
「ふしぎちゃん…!」
「こうなったら、れーじくんの弔い合戦だよ!」
「いや、勝手に殺さないでくれるかな」
「雀士の最終奥義を使うときが来たようね…」
「そんなものがあるんだ」
「覚悟しなさい! 必・殺!」
「……!!」
「雀卓返しーーーー!!」
「……」
「……」
「……」
「…こうして大魔王は滅び、世界に再び平和が訪れたのであった」
「うわ、締めに入った」
「魔道士・れーじくんと雀士・ふしぎちゃんは世界を救った勇者として讃えられた」
「嫌な勇者だよね…」
「彼らの功績は後世まで伝えられ、それはやがて伝説となるのであった… ――Fin」
「…ぱちぱちぱち。とりあえず完結したね、ふしぎちゃん」
「うん。TRPGって結構面白いね」
「正確にはTRPGってこういうのじゃない気もするけど…まぁ楽しかったからいいか」
「また今度別の物語考えてやってみようよ」
「うん。例えばどんな?」
「えーと。そうだねー。結局助け出されずに放置された囚われのお姫様のお話とか」
「あ! かぐや姫忘れてた!」