ショートコント:ふしぎちゃんと花粉症
(2008/03/10作)

「ぺくちおん」
「…? 何か言った、ふしぎちゃん」
「え。あ、ううん、これはかふ…ぺくちおん」
「…ペクチオン? 韓国のアイドルだっけ」
「違うよ。そうだけど、違うの」
「どっちよ」
「確かに韓国にそんな人がいたような気もするけど、別にあたしペクチオンに愛を叫んだわけじゃないもん」
「だろうね。ペクチオン、女の人だし」
「甘いねれーじくん」
「うん?」
「愛を叫べる女の人だっているよ」
「えっ。そ、そうなの?」
「うん。大塚愛ー! 前田愛ー! 飯島愛ー! 宮里藍ー!
「名前じゃん。しかも最後の人は漢字が違うし」
「加護あいー!」
「今どうしてるんだろうね」
「上村…ぺくちおん」
「誰よ」
「うー。違うの。花粉症なの」
「花粉症? え、今のくしゃみ?」
「うん」
「そうなんだ。なんか、ずいぶんややこしいくしゃみだね…」
「れーじくんは花粉症とかないの?」
「うん。友達には結構いるけど、僕は大丈夫」
「そうなんだ。羨ましいな。辛いよ、この時期」
「らしいね。何か対策とかしてないの? マスクかけるとか…」
「あっ、かけてるよ。マスク」
「ああ、かけてるんだ」
「うん。イギリス軍のM69ガスマスク」
「何から身を守ってんの!? ていうか何で持ってんの!?」
「あ、あとお薬も飲んでるよ」
「ああ、そうなんだ」
「パンシロン」
「一切関係ないよね、その薬」
「あれっ、でもこないだ花粉症に効くって言ってたよ」
「誰が?」
「ゴミ箱から雑誌を拾ってたおじさん」
「絶対信憑性ないと思うんだけど」
「あとあれも飲んでる。えっと、なんだっけ、花粉症に効くお茶」
「ああ、えーと、甘いやつだよね」
「そうそう。えーと。てんちょ?」
「甜茶ね。店長さん飲んじゃダメだからね」
「気をつけるよ」
「あれは? 鼻うがいってやつ」
「こないだチャレンジして溺れ死にかけたよ」
「そうなんだ。コップの水で溺れ死んだら泣くに泣けないね」
「うん。ちょっとだけおばーちゃんが見えた気がしたよ」
「それは凄い体験したね。どっちのおばーちゃん?」
「一緒に住んでる方」
「生きてるじゃん。それ本当にいたんだよ、おばーちゃん」
「ぺっ…!」
「はい?」
「…あー、なんとかこらえたよ、くしゃみ」
「ああ、くしゃみが出かけたのか。何かと思った」
「がるしおん」
「はい!?」
「今度は我慢できなかった」
「くしゃみ!? なんだか魔剣っぽくなったよ!?」
「我慢しようとしたからかな。変な風に空気が漏れたみたい」
「そ、そうなの」
「ぺ…」
「あ、また出そう?」
「りかんびん!」
「それはさすがに嘘だよね」