ショートコント:ふしぎちゃんと異世界召喚
(2019/01/04作)


「…あれ? ここどこ?」
「あれっ」
「あれっ?」
「おかしいな、キングドラゴンを召喚したはずなのに、なぜ人間が…」
「んん? あなたはだあれ?」
「む。俺は召喚士カルマ。今は仲間と一緒に魔王と交戦中だ」
「加村さん?」
「カルマだ」
「加村」
「カルマ!」
「カル…加村」
「なんで言い直した! 最初の方で合ってるよ!」
「あたしはふしぎちゃんだよ」
「フシギチャンか。分かった。だがすまん、間違って召喚してしまったようだ」
「ほえ?」
「詳しい説明をしている暇はない。さっきも言ったが、魔王と交戦中なのでな」
「魔王?」
「ああ、あれだ」
 
ドカァァン!!
「「「うわぁぁぁ!!」」」
 
「くっ、しまった。仲間たちが魔王の爆発魔法でやられてしまった。助けに行かないと」
「おおお。なんとなく状況を理解したよ」
「それは助かる。危ないからお前は下がってろ」
「なんで? あたしも戦うよ!」
「いや、どう見てもお前戦力になりそうにないだろ」
「ふっふっふ。甘いね」
「何! まさか、見た目に反して物凄い能力を秘めていたり…」
「こう見えても大型特殊免許を持ってるよ。一度も実物に乗ったことないけど」
「…それはどう役に立つものなんだ…?」
「はっ。そうかここは異世界だから、大型特殊車両自体存在しないじゃん。ごめん、役に立たないです」
「…そうか。なら下がっていろ」
「そ、そうはいかないよ! 間違いだとしても、目の前で人が倒れているのに黙って見ているなんてできない!」
「お前…!」

『猪口才な人間共め。このまま一気に片づけてくれるわ!!』

「!! 魔王がこっちに来たぞ!」
「あんな魔王なんて怖くないもん! あんな魔王…プッ
「ぷ?」
『ぷ?』
「あーっはっはっはっ! ツノ! 変なツノ!!」
『なっ』
「お、おい」
「だって! あれ見てよあのツノ! ぐいーんて! ぐいーんて変な方向にあははははははは!!」
『き、貴様! 儂の角を愚弄する気か!』
「あはははは! ぐろーだって! あははは! むしろ日常生活で苦労しそう!」
「え、えぇ…」
『なな、なんだとぉ!!』
「おいおい、めっちゃ怒ってるぞ魔王…」
「ねぇねぇ、そのツノ、生まれた時からそんな形なの?」
『勿論だ!! これは魔王の超魔力を象徴する偉大な…』
「ええぇぇぇ!! お母さん、産む時めっちゃ痛かったろうねぇ」
『フン、愚昧な下等動物と一緒にするな。我ら魔物は母体から生まれるのではない。魔力の源たる泉よr』
「ねぇねぇ、頭洗う時腕にツノ刺さったりしない?」
『話を聞け。頭など洗わぬ。そんなことしなくとも、我ら魔物は…』
「えええ! ダメだよ! ちゃんと洗わないと臭いよ! フケが出るよ! ひいては禿げるよ!」
『話を聞けと言うに。魔物は禿げたりせぬし、匂いは我の魔力を拡散し戦いを有利にするのに役立っt』
「ねぇねぇ、帽子被るときどうしてるの?」
『聞け。帽子など被らぬ!』
「えええ! ダメだよ! 真夏の炎天下の中帽子なしで歩いてたら日射病になるよ!」
『そんなよくわからぬ病気には罹らん! 魔王は状態異常無効なのだ!』
「ねぇねぇ、すっぽりかぶるタイプのお洋服を着たり脱いだりする時どうするの?」
『そんな服は着ない!』
「あー、じゃ羽織って前で留めるタイプの服だけしか選べないんだ」
『選ぶ必要などないのだ! これは魔力で精製しているからn』
「ねぇねぇ、寝る時ツノが邪魔で寝返り打てなくない?」
『本当に話を聞かぬ奴だな。寝返りなど打たぬ! そもそも我は横になって寝たりせぬのだ』
「ええーっ、それじゃ疲れ取れないでしょ?」
『我は自動回復能力があるからな。多少のダメージはもとより、疲れなど残らぬ』

「ほほう」
「なるほどな」
「いい情報を聞いたわね」
「これで戦いやすくなったな」

『な!? き、貴様らいつの間に復活を…』
「そのフシギチャンがお前と世間話をしている間に回復させたのさ」
「しかもお前の情報まで入手できるというおまけ付きだ」
「ふんふん、状態異常技は撃つだけ無駄ということね」
「道理でなかなか倒せないと思ったら、自動回復してやがったのか」
「ちまちま削るのではなく、一気に片づける必要があるということだな」
『ぐ、ぐぐぐ…貴様らァ…』
「あっ、臭い」プシュー
『ふがっ!? き、貴様、何を…』
「ファブリーズだよ! だって臭いんだもん! 言ったでしょ、頭はちゃんと洗わないといけないって!」
『ど、どういうことだ、我の魔力が…』
「フィールドを覆っていたどす黒い魔力が薄れていく!」
「そうか、匂いに魔力を乗せて拡散とか言ってたもんな!」
「フシギチャン、ナイスだ!」
『そ、そんな馬鹿なァ!!』
「ようし、一気に片づけるぞ!」
「おう!」
「「「うぉぉぉ!!!」」」
『ギャアアアア!!!!』

 :

「れーじくーん」
「あぁ、ふしぎちゃん。明けましておめでとう」
「うん、明けましておめでとうございます」
「最近連絡なかったけどどうしたの?」
「うん、ちょっとね。面白いことがあったんだ」
「へぇ。何があったの?」
「ぷぷっ。それがね、傑作でねー」
「うんうん」
「こないだ異世界に召喚された時のことなんだけど、魔王のツノがね」
「ちょっと待って。本題に入る前振りが既に衝撃的なんだけど」