ショートコント:ふしぎちゃんとハロウィン
(2023/10/31作)
「パンパカパーン!
ようこそハロウィンパーティーへ!」
「お邪魔します。気合入ってるね、ふしぎちゃん」
「そりゃそうだよ!
だって次にハロウィンパーティーができるのは一年後なんだよ!」
「うんそうだね。ごめん、あんまり特別感ないや」
「今日のパーティーはあたしによるフルプロデュースだから、期待していてくれたまえ!」
「楽しみだよ。恐らくツッコミどころ多そうなところが」
「まずはれーじくんも仮装しようね。衣装は用意してあるよ」
「そうなんだ。え、僕「も」って、ふしぎちゃんも仮装してるの?」
「してるよ!
見て分からない?」
「えっと…ごめん、いたって普通の格好に見えるけど」
「さっき噛まれたばかりで、数時間後に発症する予定のゾンビだよ」
「うん、そりゃ分からないね。まだ普通の人間だもんね」
「はいこれれーじくんの衣装」
「あ、ありがとう。…何これ?」
「ヨナルデパズトーリ」
「なんで!? なんでよりによってメキシコの悪魔!?」
「ヨナルデパズトーリの知識すらカバーしているとは、さすがれーじくん」
「普通、ミイラとか魔女とかかぼちゃのお化けとかでしょ…」
「あ。そういえばジャック・オ・ランタンも用意したよ! ほら!」
「お、すごい。本物のかぼちゃをくりぬいてちゃんと作ってある」
「でしょ!
自信作だよ!」
「…そしてその隣にキュウリとナスビの精霊馬が飾られている」
「や、なんかハロウィンってもともとご先祖様とかの霊が帰ってくる日だって話だから」
「あー。だから日本のお盆に倣ってみたのね。ご先祖様の乗り物を用意したと」
「そう!
さっすがれーじくん! 意図をちゃんと汲み取ってくれる!」
「そんで野菜繋がりで一緒に飾ったんだね。うん、分かる分かる。悲しいことに」
「さぁさぁ、ご飯も食べよう! カボチャ料理のフルコースだよ!」
「へぇー、こだわってるね。すごい」
「はい、カボチャの煮つけ」
「ちょっと予想と違った。でもホクホクで美味しい」
「良かった。はい、カボチャの揚げびたしも食べてね」
「…ありがとう。なんで和食ばっかりなのか分からないけど」
「こっちはカボチャの天ぷらだよ」
「まぁ美味しいからいいか」
「カボチャのほうとうもあるよ。温まるよ」
「なんかハロウィンというより田舎のおばあちゃんちに来た気分だ」
「はい次、カボチャの酢の物」
「さぁ怪しくなってきたぞ」
「続いて、カボチャの刺身」
「生じゃん」
「カボチャのたたき」
「叩き甲斐ありそう」
「カボチャの踊り食い」
「どういうことだよ」
「デザートもあるよ!」
「お、何だろう。カボチャのプリンとかムースとかかな」
「おはぎ」
「何でだよ。カボチャどこ行ったんだよ」
「飽きた」
「身も蓋もない」
「あ、デザートで思い出した。ハロウィンと言えば定番のアレだよね」
「アレ?」
「子供が大人にお菓子の恐喝をするヤツだよ」
「恐喝言うな。あーまぁ実年齢からしても、僕がふしぎちゃんに言うべきなのか」
「そうそう」
「精神年齢はともかく」
「今なんか言った?」
「言ってない」
「そう。よし来い。ヘイ! ヘイカモン! ヘイ!」
「ちょっとうるさい」
「ごめんなさい」
「こほん。じゃあ行くよ。トリック・オア・トリート!」
「略して?」
「えっ…トリトリ…?
いやいやなんで略させようとするの」
「冗談冗談。はい、おはぎ」
「いやそれ、デザートじゃなかったっけ」
「そうだった。じゃあハイ、かりんとう」
「あ、うん。ありがとう。もうますます田舎のおばあちゃん感」
「まぁ、あたし的には別にトリックでもいいんだけどねー?」
「え」
「いつも大人びたれーじくんの考えるいたずらってどんなのかなって。興味あるなー?」
「急にそんなこと振られても」
「トリック・オア・トリートで、あえてトリックをした。どんないたずら?」
「そんな大喜利のお題みたいに振られても」
「ヘイ! ヘイカモン! ヘイ!」
「ちょっとうるさい」
「ごめんなさい」
「うーん、そうだなぁ… じゃあとりあえずジハイドロゲンモノオキサイドを用意して…」
「え」
「エタノイクアシッドの液体と、ソディウムバイカーボネイトを混ぜて…」
「ちょっと待ってちょっと待って。意味はさっぱり分かんない。なんか怖い」
「いたずら考えろって言うから」
「本当にいたずら!? いたずらの域超えてない!? 最終的にどうなるのそれ!?」
「爆発する」
「爆発!?」
「いやあ、ふしぎちゃんを狼狽えさせると楽しいなぁ。最近気づいたわ」
「嫌なことに気づかないで!」
「まぁ種を明かすと、それぞれ水とお酢と重曹のことだよ」
「えっ」
「混ぜると、化学反応で泡を激しく吹きだすんだ。石鹸水とか入れるとなおベター」
「それが爆発? なーんだ、びっくりしたー」
「いたずら大成功だね」
「おお…さすがれーじくん、いたずらのレベルが違うぜ…(ゴクリ」
「何キャラなのそれ」
「さて、じゃあ宴も酣(たけなわ)ではございますが、ここで最後のイベントです」
「お、まだあるんだ。何だろう」
「これから渋谷に行きます」
「やめてあげて」