ショートコント:ふしぎちゃんと24時間テレビ
(2007/07/31作)
「…れーじくん」
「うんー?」
「面白くないよ。テレビ」
「随分ストレートに斬り込んで来たね。何観てたの?」
「24時間テレビ」
「あー。やってたんだ」
「画面の中で大量の芸人が騒いでいるだけで、なんとなく置いてけ堀な気分になったよ」
「生放送だしね。ドタバタもするでしょ」
「エンターテイメントとしてあまりに稚拙だと思うのです」
「なんかふしぎちゃんがふしぎちゃんらしくない辛辣な寸評をしてる」
「大体、クイズとかチャレンジとかやれば盛り上がるだろうという安易な意図が気に食わないよ」
「そうなんだ。じゃあ、ふしぎちゃんならどういう番組構成にする?」
「あたし? うーん、そうだねー。やっぱり一貫したテーマ性は欲しいよね」
「うん」
「24時間天気予報とか」
「ずっと天気予報なんだ。地味だね」
「そんなことないよ。みんなで台風生中継とかするの」
「危ないから、それは止めてあげて」
「前線と24時間併走して、番組の途中で逐一リポートとか」
「それ、いつまで経っても雨だと思うよ」
「全国の中継局から現在の天候を報告してもらって、その変遷を楽しむ」
「楽しみ方が通すぎるよ、ふしぎちゃん」
「『あっ、降り始めました! ご覧ください! 先ほど岡山を通過した雨雲が現在滋賀上空にやって来ました!』」
「たかだか雨雲を追いすぎだよ。なんで追跡中継してるの」
「ラストは雨上がりの虹が上空にかかって大団円」
「そんな都合よく虹は出ないでしょ」
「CGで」
「最後の最後でフィクションにしちゃった」
「うーん。じゃ、24時間速報ニュース」
「また無謀なことを」
「24時間ずーっと取材班が速報ニュースを提供し続けなきゃいけないから大変だけど、やりがいはあるよ」
「まぁ成功したらものすごい番組になるのは確かだね…」
「大丈夫。困ったときは台風中継に繋ぐから」
「だから、それは止めてあげて」
「『激走! カーチェイス24時間密着』」
「無理だよ。どう考えても途中でガソリン切れる」
「ラストは『一体日本の将来はどこへ向かおうとしているのでしょうか。それでは(一礼)』で締め」
「なんて紋切り型な問題提起。しかもなんの感慨もなく話題を打ち切った」
「24時間キューピー三分間クッキング」
「24時間なのか三分なのかはっきりして欲しいな」
「大丈夫。三分でできる料理を24時間ぶっ通しで次々作ればいいんだよ。えぇと…」
「480品目できるね」
「おっ、さすがれーじくん。計算が早い」
「そんなたくさん料理作ってどうするの」
「ギャル曽根ちゃん呼んどいたら問題ないんじゃない?」
「最後まで観たら胃もたれ起こしそうな番組になると思う」
「よし、なら取って置きのアイディアを出すよ」
「まだあるの?」
「24時間コマーシャル!」
「えぇー」
「24時間、古今東西のCMを流し続けるの」
「そんな商業主義な24時間は嫌だよ」
「懐かしいあのCMも出てくるよ! ♪ぱっぱっぱやっぱー、パールライス」
「古すぎて知らないよ。というかふしぎちゃんの年代でもリアルタイムでは観てないでしょそれ」
「だっだーん! ぼよよん、ぼよよん」
「…わかった。わかったから実演は止めて」
「あははー、れーじくんウブなんだからーん」
「はいはい」
「おー! モーレツぅ!」
「だから年代が古すぎるってば」
「♪このー木なんの木ハナマルキー」
「それ間違えてるからね」
「で、司会者が言うんだ。『いやぁ、懐かしいCMの数々でしたね。それではここで一旦CMです』」
「いや、ずっとCMだから」
「エンディングでは新入社員による提供朗読もやるよ」
「もう何から何までコマーシャルだね」